韓国の市民団体「転換期正義ワーキンググループ(TJWG)」などは、国連の表現の自由特別報告官などに「韓国政府に、言論仲裁法に関連した相応な懸念に対する意見を伝達してほしい」と要請する陳情書を発送した。同法に対する懸念が、国連にまで波及したということである。

 与党は8月25日の国会本会議で改正案を処理する方針であったが、国会議長の判断により採決は30日に延期となった。与野党でさらに協議を求めるためである。それだけ問題が多いということだし、国会の良識が問われているということである。

 それでもこの「慰安婦被害者法改正案」という、民主党も疑念を持つような法律が発議されようとしている。

 慰安婦支援団体「正義連」(旧挺対協)の元理事長で、寄付金を不正流用した罪などに問われ刑事被告人となった尹美香(ユン・ミヒャン)議員が仲間の議員とともに、自らと正義連に対する批判を名誉棄損であるとして法律で禁止させる動きを始めた。国会の多数の議席を頼りに不正行為を隠すことを認めるならば、韓国にもはや正義はないことになる。

 尹美香氏を巡る動きおよび今回の立法について考えてみたい。

慰安婦被害者法改正案の
最大の問題点

 与党の一部議員(印在謹=イン・ジェグン)民主党議員や尹美香無所属議員など10人の議員が発議したものであり、「日帝下日本軍慰安婦被害者に対する保護・支援と記念事業などに関する法律」を改正し、これに「被害者や遺族を誹謗(ひぼう)中傷する目的で旧日本軍慰安婦被害者に関する事実を指摘したり、虚偽の事実を流布して被害者と遺族または旧日本軍慰安婦関連団体の名誉を傷つけてはならない」という条項を新設しようとしている。

 同法によれば、虚偽の事実を流布する場合、5年以下の懲役または5000万ウォン(約470万円)以下の罰金に処するようにした。新聞、放送、出版物だけでなく、討論会、懇談会、記者会見、集会、街頭演説などでの発言も処罰対象とされた。

 この改正案の最大の問題点は、慰安婦関連団体に対する「事実の指摘」まで禁止する内容となっていることである。虚偽の事実の流布ばかりでなく、事実の指摘が含まれるといかなる批判も処罰の対象になりかねない。