つまり、誰もが情報をアップロードできて、提供者と利用者が混然一体にある「バリューサイクル」の中で生まれ育ったZ世代と、今社会を動かしている50代以上の「バリューチェーン」をベースにした人たちで、二極化していると。今世界の中で二極化が起こっているのは、富裕層の二極化よりも、デジタルネイチャーな二極化の格差のほうがでかくなっていると言っています。

「ここをちゃんと捉えないと」って、よわい90歳のコトラー先生に言われると…(笑)。なんでお前はずっと進化し続けるんだって感じなんですけど。

山口周氏(以下、山口) しかも進化のスピードが上がってますからね(笑)。すごいですよね、この人。

尾原 そうなんですよね。本当に貧富の格差よりも、「バリューチェーン型」に生きている世代と、「バリューサイクル型」で混然一体となって生きている人で格差が生まれちゃうし、「バリューサイクル型」で生きている人のほうがプロセスの中に意味を作れるので、そこにお金を払える人が1.5倍払ってしまうという。まったく違うゲームルールに入ってきているのに、世代差がすごく広がってきているんだなぁと。

 ちなみにコトラーさんは、「レディネス(学習のための準備)」を作っていくことが大事だと言っています。

山口 これはどういうことですか?

尾原 ユーザーと一緒に作っていく、一緒に自己実現していくだけじゃなくて、そこをAIが完全になめらかにしてしまう変化に対して、提供者側と利用者側がついてこられるのかをちゃんと見極めないと見誤りますよと。

 これから大事なのは、自分たちの産業フェーズにおいて、レディネスがユーザー側に足りているのか、提供者側に足りているのかをちゃんと見極めることです。

 特に、提供者側のレディネスが足りないことが多いので、むしろレディネスを作ってからやらないと、マーケティング5.0の世界には行けませんと言っているんです。

山口 なるほどね。レディネスが高い人って、初期段階ではマイノリティーですよね。そこをちゃんとわかった上で、こちらがいずれはマジョリティーになっていくことを考えないと、10年たったら、ユーザーの平均年齢が10個上がるみたいなね。そのうち全員いなくなるんじゃないかという(笑)。そこに入っていってしまう、ということですよね。

尾原 そうですね。僕たちって、まだバリューチェーン型で、良いモノを作れば売れるという人たちが、意思決定として事業部長とか取締役をしています。さらに言うと日本って、そういう人たちが貯蓄でお金を持っているので、こういうベビーブーマー世代が社会の中心として捉えられます。

 特に、提供者がベビーブーマー世代やX世代(日本で言う団塊世代ジュニア)だから、会社や社会の中でこの人たちのポジションが年功序列に持ち上がる形でどんどん確立していくのに対して、「バリューサイクル型が当たり前じゃん」っていう、Z世代が今26歳で、アメリカで言うとスタートアップの一番中心の世代に入り始めているんですよね。

山口 うん、おもしろいですね。