山口 要は、本のパッケージの形や流通の仕方は、だいたい1冊10万字、英語版200ページから300ページという形を決めてしまっています。でも、考察は日々進化していくし、「あそこは言いすぎたからちょっと言い方変えよう!」というのもあるわけですよね。
そういうのを抜き差ししていくことを本来的にはやりたいし、そのほうがクオリティーが上がるなら、受け手にとってもいいんだけど、本というのはなぜか、どこかのタイミングで切らなきゃいけない。
尾原 そうですね、切らなきゃいけない。
山口 その時点で書かれているものは「完成形」ということになって、版を増すときに微妙な修正はできますが、そうなってしまっているわけですよね。そうなっている理由は何かと言うと、ただシステムがそうなっているから、というだけです。
僕が常に思っているのは、「これは世の中に訴えたい」というテーマがあるけど、言いたさの欲求の度合いとか、コンテンツの大きさ(言うのに必要な文字数)があって。そうすると、それは本というパッケージに載らないわけです。今だとYouTubeで話せということかもしれないですが、モノもそうですよね。
設計者や技術者は、みんなコスト内で可能なものでパッケージを作って売り出すわけですが、現実にいろんなものはダイナミックに変化をしていくので、アップデートをしていくっていう…。
尾原 そうですね。おっしゃるように環境やテクノロジーがモノのパッケージを決める場合に、例えば本だと2時間から3時間で読み切る凝縮性がいいとか、テスラだと車として運転できなければならないという。「常にアップデートできる仕組み」、「完成品としての凝縮性」のバランスを良くすることが大事になってくると思います。
そういう意味では、実はもう技術制約の中で10年前から新しい形の成功例はできているんですよね。それが何かというと、ソフトウエア開発のプラットフォームである「GitHub」です。
山口 あー、なるほどね。
尾原 「GitHub」は、プログラムは絶対にバグとか変な挙動をしてはいけないから、プログラムというパッケージとしての凝縮性は残しつつ、みんなが常にアップデートできる仕組みでやっています。
「ここを変えたらいいんじゃない?」ということをやったら、それに承認する形で全体の整合性とアップデート性を担保することや、フォークするという形で、文献をどんどん作っていって、文献の中で完成品がそれぞれ生まれるみたいなのがあって。
実は、この「GitHub」の本版があるのって知ってました?
山口 いや、知らない。