山口 そうなんですよ。だから見えていないんだけど、未来の可能性に向けて、その時点ではできないものを作ろうとしているんですよ。

尾原 そうですね、すごい。それって、このドゥオモに何かみんなロマンを感じたからですよね。この話、すごくステキだなと思うのが、コロナの時代って、マジでそれが必要だと思ってるんですよ。

 まだまだワクチンって未開発な部分も多いし、ワクチンを子どもたちに接種するときの治験が足りないこととかいろいろあったりするんだけど、それがあったとしても、僕たちもう10億人クラスの人たちが、ワクチンを受けるという選択をしていますよね。

 それって、今回みんなの力が集まって、たったの9カ月でワクチンが開発されたように、「今は解決されなかったとしても、この後ワクチンの副作用が出たとしても、誰かがきっと解決してくれる!」と、今は見えない未来にみんなで向き合っているからですよね。

 未来にみんなが向き合っているから、やがて後ろから技術が追いついて、誰かが作ってくれる、英雄が追いつくことって、今の時代にすごく必要だなと思います。

これからの時代、「完成形」の概念が根本的に変わっていく理由尾原和啓氏氏の近著『プロセスエコノミー』が7月28日に発売された。発行:幻冬舎

山口 そこはやっぱり、「俺たちだけで作って、完成版ができ上がったら出します!」というのではなくて、いろんな人が関わっていたからですよね。

「こういう問題がまだ解けないんだけどどうなの?」って言ったときに、150年後にブルネレスキという人が出てきて、「こうやったらいいんじゃない?」って言って考えたときに、あのドームができ上がったということで…。

尾原 鳥肌が立ちますね。

山口 その時点で可能な技術の中でないと、設計図が作れない、というのは近代のパラダイムだったんだけど、そういう意味で言うと、中世って作られ方がよりエレガントなんですよね。

尾原 そうですね。

山口 人の可能性を織り込んだ上で、その時点ではできないんだけど、ギリギリ300年くらいの間にできるんじゃないか? というので、どんどんオープンにして。いろんな人を巻き込んでいくことをやってルネサンスが前に動いて行ったというのは、すごいこのプロセスエコノミーに可能性を感じる話ですよね。

尾原 いやー、毎回あれですよね。周さんって、「あとがき」がすごくエモくて、すごく未来を見させるエピソードを引っ張ってきて、本当に鳥肌が立ちますね。

 今日は、「今までのプロセスエコノミー」から「未来へのプロセスエコノミー」という話まで、本当に幅広くありがとうございました。

山口 はい、どうもありがとうございました。