クレーム対応においても同様です。常に白黒を決めようとし、一歩も引かない態度で対決するのでは気持ちに余裕が持てません。実は、そうした相手の焦りを誘うこともまた、クレーマーの狙いどころなのです。

 時には、斜めに一歩下がりクレーマーの攻撃をかわす(やり過ごす)「体さばき」や、いったん立ち止まって相手や事態(自分自身の足元)を見守ることも必要です。こうすることで、次の一手を効果的に打つことができるのです。

 これが、私の個人的なリスクヘッジであり、「斜めにかわす(やり過ごす)技術」と名づけて大事にしていることです。

長時間対応してもらちが明かないときは「ギブアップトーク」を

 斜めにかわす、やり過ごす技術とは、“解決を急がない”ということです。クレーム対応の現場で肝に銘じておいてほしい鉄則でもあります。

 30分以上対応しているのに、まったくらちが明かないことがあります。こういうときに、スピード解決を目指して相手を言いくるめようとしたり、よく考える前に相手の言いなりになってしまったりすると、かえって事態を悪化させてしまいます。

 また、「早く終わらせたい」と一度でも過大な要求を受けて入れてしまうと、それが既成事実となって要求はどんどんエスカレートしていきます。焦りが原因で、二次クレームを誘発しやすくなるのです。

 こうした場合のテクニックとして「ギブアップトーク」をおすすめします。ギブアップといっても、道頓堀の「グリコマーク」のように両手を上げて、相手の言いなりになるという意味ではありません。焦って無理に解決しようとせず、早めにギブアップする方法です。

 特別待遇や即答を要求されたら、「私一人では判断できません」。「SNSに流すぞ!」などと脅し文句が出たら「困りましたね」と応じてやり過ごすのが得策です。クレーマーはのれんに腕押し。気勢をそがれ、捨てゼリフを残して引き下がるでしょう。相手の攻撃を斜めにかわしながら、「無理なことは無理」と告げるのです。ギブアップトークの具体的な使い方については、次回解説します。