少数精鋭を求めるとともに
ポストが上の者ほど手厚い給料に

 基本方針の四つ目は「活力ある会社づくり」です。

 私の社長就任前は、会社の将来が見えない中、多くの社員が辞めていくし、社員がやる気を失っていました。多くのやる気がある社員が転職してしまい、また、中にはうまくさぼる社員もいました。

 だから私が社長就任後は何とか気持ちを前向きにしなければならないと思いました。店舗閉鎖やリストラのような後ろ向きなことはしないと決めたのもこうした背景があったからです。また、財務的に厳しい中、居抜きでもいいので出店したのは、やはり流通業は新規出店すると元気が出るからです。

 さらにテレビコマーシャルも本格的に始めました。

 当社はそれまで、テレビやラジオのコマーシャルはおろか、新聞広告やチラシの折り込みも含めて宣伝広告はほとんどやっていませんでした。

 一番の競合企業はテレビコマーシャルなどをたくさんやっていましたから、当社や加盟店の社員からすれば、一般に社名を知られていないというのは、やはり寂しい。

 だから、店舗に来た顧客から「あんたの店のテレビコマーシャル見たよ」と言われるだけで、元気が出るんです。業績が回復する中でテレビコマーシャルを増やしていくと、さらに元気が出るようになりました。

 社員たちには「給料は上げるぞ」と公言しました。業績が赤字なのに本当に給料を上げるのかと疑問に思った社員もいたようですが。

 給料を上げる際に考えたのは、ポストが上の者ほど、手厚くするということです。

 多くの会社では、非管理職がちょっと残業しただけで、上司である管理職より高い給料をもらっています。しかし、これでは上の者にやる気なんて出ませんから、絶対にダメだと思っています。

 そこで、各役職の手当を上げることにしました。

 業績に応じて支給額を変えるなどという細かいことはしていません。

 例えば、業績に貢献している係長がいれば、課長に昇格させればいいんです。課長でよくやっている人がいれば部長にする。

 そうやって役職が上がるに従い、給料も上がるということです。

 もちろん、給料の原資を大幅に増やすことはできません。誰もかれも給料を上げていけば利益が減ってしまいます。

 しかし、今まで6人でやっていた部署があったとして、そのうちの1人を異動して5人に減らします。部署の仕事量は変わりませんから、社員たちはより少数精鋭になることが求められます。その一方で、1人減った分の人件費を、5人の給料アップの原資にするわけです。ぬるま湯での仕事はできなくなりましたが、その分、給料が上がったことで、結果的に社内からの文句は出ませんでした。

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