ここで触れておきたいのは安倍氏と岸田氏の関係性です。実はこの二人は旧知の仲で、党青年局長時代に全国行脚をした際、お酒を飲むよう地域支部の方々から強く勧められて困っている安倍氏のお酒を、酒豪の岸田氏が身代わりになって飲みまくったそうです。

 そんな古い友人関係もあって、安倍氏が元気な間、「僕の次は岸田さんだから」とよく周囲に話されていたとか。だから、安倍氏の心中を察するに「菅氏を推さなければ仁義に反する、男が廃る。けど、岸田さんには頑張ってもらいたいんだよなぁ」ということなのでしょう。派を挙げて菅氏を応援するぞという空気感にはならないと思われます。とにかく、安倍氏はキーパーソンになることには変わりないでしょう。

 同様に麻生派も大きな存在です。私としては先に挙げた反二階勢力の本丸だと捉えています。報道によると前回の岸田氏は麻生氏への対応を失敗したことで応援を取り付けられなかったということですが、今回はこのメッセージも受けて、麻生氏には深く刺さったことでしょう。

 とはいえ、同じ閣内にいる麻生氏が菅氏に反旗を翻すこともまた仁義に反するわけです。従って、結果として安倍派と同じように、緩やかに菅支援に回るという「表面上の菅支援に回る」結果になるのではないでしょうか。

岸田首相誕生が
難しくなる条件

 私はこのような構図になっていき、反菅・反二階の構造がじわじわ広がっていき、消去法で岸田氏に決まる流れになりつつあると感じています。

 ただ、です。先ほどから述べているように「菅氏が出る」ことが前提です。もしも、菅氏が一転「次の世代にバトンを渡そうと思う」となった時点で、この政局はガラッと変わります。国民的にも人気のある河野太郎氏や小泉進次郎氏を後継指名して退陣となると、岸田新総裁の誕生の雲行きも怪しくなります。

 また派閥横断で若手議員が集まって自分たちの横のつながりの中で若い候補を立てようという動きも出ています。これまでの派閥の縦の拘束力から解放されて横が結束するという歴史的な流れができれば、国民の期待もまた高まることでしょう。その覚悟も試されている時期かもしれません。

 そうした機運はどこまで高まっていくのだろうかと思いつつ見守っていますが、福田康夫元首相のご子息の福田達夫氏、今の青年局長で初の女性局長である牧島かれん氏など、名前が挙がっています。どちらも将来有望の二人なので、ここでリスクを冒して名乗りを上げるのか、難しいところです。

 コロナ禍で日本が、世界が暗くなっているこの時期に日本のリーダーがこの現状を打破できるか、そのための大事な総裁選挙になります。注視していきたいですね。

(元衆議院議員 宮崎謙介)