日本で見えなかった病巣部を正確に映す
病巣をピンポイントで狙い撃ち

Q:PSMA治療前の検査について教えてください。

 PSMA治療は、PSMAが現れている前立腺がんにしか効果はありませんので、まずはPSMAの存在を「PSMAペット検査」で確認、診断します。PSMAペット検査は日本のペット検査とかかる時間も方法も基本的に一緒ですが、体内のPSMAをサーチし、PSMAの存在する部位だけを際立って鮮明に、インパクトのある画像として浮かび上がらせます。

 体には苦痛もなく、ほとんど害もありません。PSMAペット検査の診断によって、日本でできる検査では見えない病巣部を正確に知ることができます。これにより、ピンポイントで放射線治療であるPSMA治療を狙い撃ちできるようになります。

Q:PSMA治療のサポートを始めたきっかけを教えてください。

 オーストラリアに患者さんを送るきっかけは、患者Aさんから「この治療は有効で副作用も少ない。日本の患者さんのために窓口になってくれないか」というご依頼でした。

 Aさんは全身に転移がある去勢抵抗性前立腺がんの状態で、日本でできるすべての治療をやり終え、緩和医療しかないという状況でした。ご自身で最新の情報を調べ、自らオーストラリアに行き、このPSMA治療をされました。

 PSMA治療に限らず、患者さんがご自身の努力で個人的に国内未承認の医療を、海外で受けてくるケースがあることは認識していましたが、その貴重な経験などは埋もれてしまい、日本の医師にも他の患者さんにも生かされないことは残念に感じていました。

 私は2018年1月にオーストラリアのパースに拠点を置いてこの治療を専門的にしているナット・レンゾー先生を訪ね、日本の患者さんを受け入れてもらえないか直談判しました。幸い、先方から快諾をいただき、その後、泌尿器科医として普段から協力体制にある車英俊先生に相談し、セラノスティクス横浜を設立したわけです。

 われわれは単なる商業的な医療ツーリズムではなく、医療者が専門知識を活用して患者さんをサポートする体制を整え、これまで活動してきました。