海外治療の不安を解消し
タイムリーに手を差し伸べたい

 セラノスティクス横浜のプログラムコーディネーターで、普段は地域のかかりつけ薬局や在宅医療で患者さんに寄り添う薬剤師の岡崎千栄子氏に、現地での治療や生活の細部を伺いました。

Q:活動に参加した経緯を教えてください。

 在宅医療でお看取(みと)りした前立腺がん患者さんの、もっと生きたいという願いを実現できる治療がPSMAだと確信して、セラノスティクス横浜の活動に参加しました。

 患者さんとご家族にとって渡航治療は大きな決断です。治療への不安はもちろんですが、滞在への不安、特に言葉についての大きな不安があります。私たちは患者さんとご家族から、どんなに小さな不安でも打ち明けていただける関係を心がけ、渡航前に解消できるよう努めています。

 滞在先のシドニーと横浜は幸い時差が1時間ですので、渡航後もリアルタイムで細かなやりとりができます。

Q:コロナ禍での海外渡航、しかも国内未承認の治療という特殊な事情の中、不安を抱える患者さんと関係機関の間に立っての調整はどのようなものがありますか。

 調整作業は、治療ビザ、旅行制限解除、旅行宣言(出発の72時間前の渡航申告書)、2週間の強制隔離、PCR検査など多岐にわたります。

 ご家族で渡豪される方が多いので、必要書類の準備などたくさんの緻密な作業と時間を費やしています。渡豪後は実際に現地でPSMA治療にあたる医師パートナーや通訳さんと密に連絡を取り合っています。

 私の専門である薬剤師としては、服用薬の把握、英文の服薬情報提供書作成、現地での市販薬情報の提供、治療前後の体調と副作用の聴き取りなどを行っています。

 セラノスティクス横浜では、医師、薬剤師ともに日々の多忙な臨床活動の傍ら、これら膨大な業務をボランティアで活動しています。

Q:最新の治療と海外渡航、現地滞在の諸業務を合わせると、一体費用はどのくらいかかるのでしょうか。

 PSMA治療は、1回約160万円、推奨している3回の治療で現地滞在費などを含めると600万円以上かかるケースもあります。これまで海外渡航された方々にとっては高額な負担となりました。

 皆さま、前立腺がん患者・家族の会“腺友倶楽部”の会合に出席するなど、しっかりと治療についての理解を深め、時間をかけて吟味されました。費用も含めた大きな決断ですので、私たちもそのお気持ちをしっかり受け止めてサポートしています。