製薬会社のMRに代わって
医療情報サイトが営業活動

 4位は医療情報サービスのケアネットで、平均年収は172.40万円上昇した。同社は医師・医療従事者向けの医療情報サイト「Care Net」の運営と、それに合わせた製薬メーカーの営業支援サービスを行っている。

 20年12月期決算は売上高が6割増、営業利益・経常利益が2.5倍に伸びるなど絶好調だった。ライバルはこうしたビジネスモデルを開拓した最大手、エムスリーであり、「彼らに比べると当社はまだ小さな会社で、伸び代が大きい」(同社幹部)。年収上昇の大部分は業績に連動した賞与によるものだが、従業員の昇給も進めているという。

 病院側のコンプライアンス強化の影響で製薬メーカーの営業活動が制限されるようになり、MR(医薬情報担当者)のリストラも増えている。そこをコロナ禍が襲い、ますます訪問営業は下火になった。「製薬メーカーがサードパーティーであるわれわれを使う傾向は今後さらに高まるはずだ」(同)。

 21年12月期の業績も絶好調で、6月末の上期終了時点ですでに、従業員に賞与を支給したという。通期計画の上方修正とともに、年収も上振れることだろう。

 従業員は、以前は医療・医薬業界出身者が多かったが、今は異業種からデータサイエンティストなども採用している。また今後は、組織規模の拡大に当たって人事や経理、総務といったコーポレート職のエキスパートを増やす意向だという。

 5位はAI認識技術を活用したクラウド型OCRサービスを手掛けるAI insideで、平均年収は139.00万円上昇した。21年3月期の業績が良かったので、賞与がそれに連動して上昇したとのことだった。

 なお、今回のランキングでは、単体の従業員数が100人未満の会社を除外したとお伝えしたが、前期比で従業員数が20%以上減少した会社や、従業員の平均年齢が2歳以上上昇した会社も除外した。前期から直近にかけて、持ち株会社になったり、会社本体の従業員の多数をグループ会社に異動させたりした影響を、極力排除するためだ。

 こういった場合、平均年収の開示対象となる有報の提出会社(単体)は少数のエリート社員ばかりになってしまう。これでは前期比で年収が大きく上がったとしても、グループ会社間での従業員の異動による見せかけの増加にすぎないというわけだ。

 次回は「年収が下がった会社ランキング」を予定している。今回の記事と併せて参考にしてほしい。

(ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)

>>年収が上がった会社ランキング2021【全500社・完全版】を読む