「脳力アップ」によって、より良い人生を送れる可能性が高まる理由味方からのパスを受け取る瞬間、パス、シュート、ドリブル、どこに動くなど、どう対処すべきか決断するのも実行能力のひとつ。この能力が低下すると、いわゆる「決定力不足」の状態に陥るPhoto/Getty Images

運動は脳の機能を押し上げて、感情コントロールさえしてくれるという。運動によって「脳力」がアップする、知られざるメカニズムとはどんなものか。人が生きていくために最も重要視されている「実行機能」への影響から考えよう。(マガジンハウス『ターザン』2021年6月10日号特集「運動は、なぜ脳に効くのか?」より転載)

よりよく生きるために必要な
脳の認知機能ってなんだ? 

 雨雲が近づいてきたから洞窟に帰ろう。獣のフンを辿って狩りのルートを決めよう。このように、外部の情報を集めて処理をするのが脳の認知機能。知覚や記憶なども認知機能の一部だが、人が生きていくために最も重要視されているのが「実行機能」と呼ばれるものだ。

「脳力アップ」によって、より良い人生を送れる可能性が高まる理由ヒト特有の知的な情報処理を担当するのが前頭葉。よりよく生きていくために必要な認知能力は前頭葉の支配下にある。運動でとくにボトムアップが期待できるのが実行機能といわれる5つの能力。
拡大画像表示

 これは目標を達成するために適切な行動を実行する能力のこと。単一の機能ではなく外部情報や過去の経験をすり合わせ、最適解を導き出すというハイレベルな機能だ。

 さっきライオンの姿を見かけたので(短期記憶)、別の道を選び(柔軟性)、日暮れが近づいたので獣の深追いをやめ(抑制能力)、ドングリを拾って帰ろう(判断能力)。という具合に、さまざまな情報をフィードバックさせて最適な行動を選択する。サッカーのゲームでパスかシュートかドリブルかを瞬時に判断するのも実行機能のなせる業。

 この能力を統合し、調整しているのが脳の前頭葉。『SPARK』の著者、ジョン・J・レイティ博士が言うところの「脳のCEO」だ。

 運動で前頭葉の神経活動が高まるのであれば、よりよく生きるために最も必要な実行機能が鍛えられる可能性も大ありということ。