「レコードが再び注目されるようになった背景には、『Apple Music』や『Spotify』に代表されるサブスクリプションサービスの台頭が影響しています。配信で好きな音楽を、好きな時に、好きなだけ聴けるようになったことによって、「この曲、いいな」と楽曲をモノとして所有しておきたいというリスナーのニーズが高まり、レコード再評価につながりました。アーティスト側もそうしたトレンドを敏感に察知しており、新譜をあえてアナログ盤で発表するケースも増えています。彼らは今や、CDのセールスで勝負するのではなく、YouTubeなどで楽曲を公開して認知度を高め、ライブの集客とグッズや限定盤レコードなどの販売で収益を得る方向に活路を見いだしているんです」

1枚10万円以上する
“レア盤”が生まれるワケ

 ブームも手伝ってか、加藤氏が本格的にレコードを収集し始めた1990年代に比べて、中古のアナログ盤の価格は上昇傾向にある。中でも一部のタイトルには10万円を超えるプレミアム価格が付けられ、コレクターたちの垂涎の的となっている。

 加藤氏によると、現在高値で取引されている中古盤の多くは「発売当時はまったく売れず、後年になって再評価された楽曲が収められている」という特徴があるという。

「荒井由実(松任谷由実の旧姓)のデビュー曲(『返事はいらない』)はさっぱり売れず、販売枚数はせいぜい300~800枚ほどだったといわれています。周知の通り、その後彼女はビッグアーティストになり、デビュー曲の評価が高まるにつれて希少価値も上がり、オリジナル盤は現在10万円近い値が付けられています」

 さらに、現在プレミアム価格が付いているレコードには発売当時大ヒットした楽曲も含まれる。

「プリンセス プリンセスが1989年に発表した『Diamonds』はレコード、CD、カセットの3形態で発売されました。累計170万枚を売り上げた大ヒット曲ですが、当時はすでにCDが主流となっていたため、CDに比べてレコードの流通量は圧倒的に少なく、現在CDでは100円ほどで購入できますが、アナログ盤にはおよそ1万円の価格が付けられています。また、森高千里は主流な音楽メディアがレコードからCDに移行する端境期である1987年にデビューしました。彼女の初期の作品はレコードでもリリースされているものがあり、現在は高い値段で取引されているんです」