問題解決と新たな問題の狭間で
アップルが「児童ポルノ」画像検知技術を発表

https://www.apple.com/child-safety/

 2021年8月5日、アップルは、アップルが提供するクラウドサービス「iCloud」へ写真をアップロードする際、子どもに対する性的虐待の画像を検出する技術を、2021年中に導入すると発表しました。

 昨今、子どもに対する性的虐待の様子が記録された、いわゆる「児童ポルノ」画像が発見されるケースが世界中で増えています。日本においては、子どもたちが児童ポルノサイトへアクセスすることを防止するブロッキングや、スマートフォンのフィルタリングの義務化などの対策を行っているものの、被害件数は増加しているそうです。

 そのような中、今回のアップルが導入しようとしている技術は、「iCloud」へ写真をアップロードする際、ユーザーの端末上で写真をスキャンし、複数のアルゴリズムが疑わしい写真を検知してフラグを立て、アップルが手動で審査。子どもに対する性的虐待の画像が見つかれば通報するというもの。児童ポルノに関わる問題を、新たな切り口で解決する糸口となる可能性が大いにありそうです。

 一方、こうした技術の導入に関して、ユーザーのプライバシーが侵害されるのではないかと不安視する声も多く上がっています。こうした声に対してアップル側は、プライバシーとセキュリティーを保護する対策を行っており、アップルが児童ポルノ以外の写真の内容を把握することはないと主張しています。実際、9月2日にはアップルは、導入を延期し、さらに時間をかけて機能改善を施す旨を発表しています。

 このように、人が生み出した技術には、社会問題を解決するなどプラスに働く可能性を持つ一方で、新たな問題(ここでは、写真のスキャンによってプライバシーが監視されるかもしれないといった危険性)をはらんでいることもあるのです。

 デザイナーとして、「サービスの先」にユーザーがいることを常に意識し、デザインしたものが本当にユーザーを幸せにすることができるのか? という視点を忘れないようにしたいですね。

機能だけではなく「情緒的価値」をもたらす
湖池屋の「5年保存できるポテチ」などが入った一斗缶

https://koikeya.co.jp/news/detail/1249.html

 菓子メーカーの湖池屋が、「ローリングストック」を世間に普及させることを目的に、新たに開発した5年保存ができるポテトチップスなどが入った「板橋区×湖池屋 あんしん5年缶」を板橋区に提供したと発表しました。

 ローリングストックとは、非常時に活用できるような生活用品や食材を普段から多めにストックしておき、ストックするだけはなく、日常的に使用し、不足したら買い足すというストック方法です。

 非常時に役立つアイテムを、使用期限を更新しながら常に家庭内にストックしておく、近年、自治体などから広く推奨されている防災対策です。

 食べ慣れた味でつい、つまみたくなるポテトチップス。そんなポテトチップスを防災用品に加えることで、こうしたストック方法の循環が活発になり、気づいたら消費期限が切れていた、ということが減るかもしれません。

 なお、ポテトチップスはかつて、お釜で揚げたポテトチップスを袋に入れた後、一斗缶に詰められ、町のお菓子屋さんなどに出荷。そこからお客さんに量り売りをしていた時代があったそう。一斗缶との組み合わせは、遮光性や密封性といった「機能的価値」だけではなく、人々の情緒に訴えるような「情緒的価値」ももたらしてくれるのかもしれません。

 私たちデザイナーは本来、デザインする対象物の機能的価値へ注力するだけでなく、情緒的価値ももたらすことができるよう取り組まなければいけない、そのようなことを思い起こしてくれました。