コロナ禍の運送で、笑う企業と泣く企業

 冒頭のJ社長は、「コロナ禍がはびこる今、一番もうかる会社はどこかと言うと、ワクチンを開発した会社と思う人がほとんどだろう。実はコンテナ製造会社もたいへんもうかっている」と指摘している。

 もちろん、海運会社も、もうかっている。J社長から転送されてきた関連のリポートなどによると、海運業界のコンサルタント会社は、コンテナ運送会社の2021年の営業利益は2019年の15倍になるだろうと見ている。

 中国の国有海運最大手は中国遠洋海運集団(COSCOグループ)だが、同グループの中核上場会社、中遠海運控股(COSCOシッピング)は今年上半年の純利益が371億元(約6335億円)で、平均して毎日2億元(約34億円)のもうけとなる。日本のメディアもこのことに気づき、「売上高、純利益ともに過去最高。新型コロナウイルス禍で運賃が高騰するなか、運航する航路を増やしたことが奏功した」と取り上げている。

 しかし、笑う企業があれば、泣く企業もある。海運会社はもうかっているが、対外貿易関連の会社や製造業に従事する中小企業は泣きたくても涙が出なくなるほど苦しい状態に陥っている。

 世界最大の雑貨の町・義烏は、「泣き組」だ。通常の輸送市場では、海運の価格が最も安い。だから、中国の輸出入貨物関連の輸送の約90%は海運が占めている。しかし、今では海運価格が「中欧班列」と呼ばれる中国とヨーロッパ間の定期列車便の運送価格を上回っている。そのため、多くの荷主は中欧班列による輸送を選択するようになった。最新のデータによると、7月の中欧班列の運行本数は前年同期比8%増の1352本となり、輸送貨物も同15%増の13万1000TEU(標準コンテナ)だった。月に1000本以上の定期列車便の運行は、2020年5月から15カ月も継続している。

 しかし、中欧班列はヨーロッパまでしか貨物を運べず、米国に行くにはやはり海運を利用するほかに選択肢はない。海運を利用する多くの中国輸出会社にとっては、苦しい試練に耐えなければならない日がまだ続いている。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)