歯に衣着せぬ発言と行動力で
「韓国のトランプ」の異名

 李在明氏は貧しい家に育ち、小学校卒業後、工場労働者として働きながら中学と高校の卒業資格を取得し、奨学金で大学に通った。さらに司法試験に合格し、人権派弁護士として活動後、京畿道の城南市長や道知事を歴任した。政治家転身後は歯切れのいい発言と行動力で人気を得てきた。トランプ大統領のような歯に衣着せぬ発言から「韓国のトランプ」の異名がある。

 こうした経歴が示すように、弱者目線の政治が原点にある。

 李在明氏は出馬表明の際、韓国の危機の原因として不平等と二極化を挙げた上で、「公正性の確保が希望と成長を可能にする」「機会が平等で、公正な競争の結果に見合った保障がある社会こそ未来がある」と主張する。そして、格差社会是正のため、「財閥解体」を主張、「現在の大統領の権限だけで私は天国を作れる」(京郷新聞2017年1月3日)と豪語したこともある。

 これは格差が広がる韓国社会の現状に対する一般庶民の不満を吸い上げたものであり、国民の支持を高める要因となっている。だが、財閥企業の輸出で支えられてきた韓国経済の土台を崩壊させかねない政策でもある。

 さらに李在明氏は弱者への直接の救済を主張する。同氏は「特権と反則を基盤とする強者の欲望を節制し、弱者の生活を支える」と格差解消をアピールしており、国民一律に1人当たり年間100万ウォン(約9万5000円)の「ベーシックインカム」(最低生活保障)支給を公約に掲げる。

 城南市長時代、就職難に苦しむ24歳の若者に一律で年間100万ウォンを支給した政策は「大衆迎合のばらまき」と批判されたが実行された。

 李在明氏の国民世論受け政策は、一見魅力的に映るかもしれないが、それは典型的なポピュリストの政策であり、韓国経済を崩壊させかねず、将来への負担を加重させるものである。韓国国民がより広い視野で李在明氏の政策や人柄を評価しないと、同氏を選んだ後、多大な後悔をする羽目に陥る可能性が高い。