その後、B部長は、早速A社長にD社労士から受けたアドバイスの内容を報告した。その結果、次の取り決めがなされた。

(1)明日臨時で管理職会議を行い、社員が新型コロナに感染または濃厚接触者になった場合の対処と、副反応の症状により社員が会社を休む場合の処遇について検討する。
(2)社員に対するワクチン接種の強制は取りやめ、全体朝礼や社内掲示板などでの奨励を行う。
(3)ワクチン接種者へのすき焼きセットの提供は取りやめる。

 A社長の取り決め内容を聞いたB部長は一瞬残念そうな表情をしたが、すぐに気を取り直し、

「社長。すき焼きセットは楽しみにしている社員が多かったので、会社からのお年玉として全員に配ったらどうですか?福利厚生費の予算的には十分可能な金額です」

 と提案した。

A社長は、B部長の顔をのぞき込み、

「ほう、全員ねえ?」

 と首をかしげた。そして困った顔をしたB部長を見ると笑いながら言った。

「分かった。部長の提案通りにするよ。決まり!」
「よっしゃ!!」

 B部長は、晩酌をしながらすき焼きをつつく自分の姿を想像し、心の中で叫んだ。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため個人名は全て仮名とし、一部を脚色しています。