迅速かつ大規模に進む
自動車業界の再編

 世界の自動車業界では、国境をまたいだ再編が進んでいる。2020年、アウディやポルシェ、チェコのシュコダなど複数のブランドを持つ独フォルクスワーゲンが、米フォードと包括提携に調印した。また、フォルクスワーゲンはスーパーカーブランドのブガッティをクロアチアの新興企業であるリマッツの傘下に移し、一般大衆車の電動化への選択と集中を進める。

 仏ルノーは日産自動車、三菱自動車とのアライアンスを組み、イタリアのフィアット・クライスラーはフランスのグループPSAと統合、世界第4位の自動車メーカーであるステランティスが誕生した。それに加えて、EV分野では米国のテスラや中国のBYDが販売台数を増加させている。

 国内ではトヨタ自動車がマツダ、スバルなどと資本業務提携を結び、すでに関係を強化してきたスズキ、ダイハツ、日野自動車、いすゞ自動車とは商用車の技術開発を行う共同出資会社を運営する。その中で、ホンダは国内メーカーではなくGMとの提携を選択し、関係を強化している。

 完成車メーカーの合従連衡の背景には、世界の自動車産業が100年に一度と呼ばれるほどの、過去に経験したことがない大変革を迎えたことがある。その一つが電動化だ。

 電動化は世界の自動車産業のゲームチェンジだ。電動化によって自動車生産の常識は根本から変わる。自動車にはエンジンを中心に約3万点の部品が使われる。エンジンの安全性、走行性能などの向上のために、日独の自動車メーカーはすり合わせ技術を磨き、その強みを発揮することによって世界シェアを獲得してきた。

 しかし、地球温暖化への対応のために脱炭素が世界全体で重視され、自動車のEVシフトが加速している。EVの生産に用いられる部品点数は約2万点に減少し、その生産はすり合わせ型から「ユニット組み立て型」に移行する。