EV化の加速の中での
ホンダの生き残り戦略

 EVシフトによって、ホンダが磨いてきたすり合わせ技術の優位性は低下する。電動化は、既存の自動車産業にとって死活問題だ。1990年代以降、わが国電機メーカーは、デジタル家電の設計・開発と生産の分離、それを背景とするユニット組み立て型生産の加速に対応できず、競争力を失った。わが国自動車メーカーが内燃機関の製造技術に固執すれば、かつての電機メーカーの二の舞いになる恐れがある。そうした危機感の高まりから、ホンダはGMをアライアンスのパートナーに選んだ。

 その目的の一つは、「規模の経済」の発揮だ。主な取り組みに、EVの共通化などによる固定費の削減や、燃料電池や自動運転技術の共同開発による事業運営の効率性向上がある。

 加えて、アライアンスには「企業風土変革の起爆剤」としての側面もある。

 リーマンショック後、GMは一時国有化されリストラを断行して事業体制を立て直した。その上で、GMは電動化の強化やIT先端企業とのアライアンスを強化するまで経営体力をつけた。ホンダは、「痛みを伴う自己変革」を進めるGMの組織風土を取り込み、自社の生き残りの力を高めようとしているようにみえる。

 生き残りを目指すホンダの危機感の強さは、同社独自の発表からも確認できる。ホンダは2040年までに「脱エンジン」を宣言し、人員削減も実施した。経営陣は電動化への取り組み強化が生き残りの道であるとの旗印を組織全体に明示し、EVやコネクテッドカー、自動車のシェア、自動運転に関する技術開発やビジネスモデルの構築など、組織を構成する一人一人に先端分野での取り組み強化を求めている。

 なお、30年に英国が、35年にEUがガソリン車やディーゼルエンジン車の新車販売停止を目指している。欧州では原材料を含め自動車の生産、使用、廃棄から排出される二酸化炭素の量で自動車を評価する「ライフサイクルアセスメント」の導入も目指される。アライアンスなどによるホンダの電動化戦略はさらに強化される可能性が高い。