自給率目標を引き上げる
四つの理由

「自給率が低いからといって、今までも輸入が途絶えたことがないから大丈夫」

 そう安心している人は多いだろう。

 では、国が自給率を少しでも上げようとしているのはなぜだろうか。

 政府は2010年の閣議決定で、10年後の20年の自給率目標を、カロリーベースで50%、生産額ベースで70%まで引き上げるとした。その理由として下記の四つを挙げている。

(1)途上国では引き続き人口が増加
(2)バイオ燃料生産は引き続き増加の見込み
(3)地球温暖化は食料生産に影響
(4)世界の水資源の制約状況

 そして、目標達成のために「国産小麦、米粉の使用割合の引き上げ(1割→4割)」「畜産物の飼料自給率の向上(26%→38%)」「国産食用大豆の使用割合を引き上げ(3割→6割)」などの政策を掲げた。

 だが、いずれも達成できず、政府は2015年カロリーベースの目標を45%に引き下げざるを得なかった。生産額ベースは75%に引き上げられたが、食用の穀物や油脂用穀物、飼料用穀物の輸入が減少していけば、その目標の達成も危うくなるだろう。

 特に、途上国の人口増加と地球温暖化の影響が懸念材料だ。世界の穀物(コメ、トウモロコシ、小麦、大麦等)消費量は、2000~01年度で18.7億トンだったが、人口増加により、10年後の20年~21年度では27.9億トンにまで増えている。それに伴い生産量も18.5億トンから27.7億トンに増やすことができたので、何とか供給できている状況だ。

 しかし、10年間で10億トン近くも生産量を上げたということは、それだけ農地を開発したことになる。穀物を生産できる用地は、地球上でも限られている。生産量が飛躍的に伸びたのは、森林伐採により耕地面積が増えたからだが、森林を伐採すればするほど温暖化は加速する。森林伐採はいずれ近いうちに限界を迎えるだろう。そうなれば、人口が増え続ける中で食料不足が深刻化することは目に見えている。