「生存圧力」が「プロセスエコノミー」を生み出した

尾原 今とても興奮しています。なんで興奮しているかというと、高宮さんとシンクロ具合が半端ないからなんです。一般的な方は、前回おっしゃっていた「大きな3つの流れ」の三つ目の「価値の変化」から入ります。

 実は、今回の『プロセスエコノミー』という書籍は、ビジネス書であると同時に、「個人の生き方が変わったよ」という趣旨の本なので、「ビジネス構造論」をあえて削ったんです。

 その削ったところが、まさに高宮さんがおっしゃっていた、一つ目と二つ目の話なんです。特に、一つ目の話にありましたけど、本来インターネットって「エンパワーメント」や「パワー・トゥ・ザ・ピープル」といって、個人に力を与えるものだったはずですよね。

 けれども、インターネットは、つながる力が掛け算になるがゆえに、つながりの掛け算をたくさん持ってしまった。その結果、「つながること」に長けた「GAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)」が強くなり過ぎてしまいました。そのため、インターネットの裏側にある「マイクロエコノミー」が、見えにくくなっています。実際に、「Apple税(有料アプリの配信手数料)が30%」みたいな話が出てきていますよね。

高宮 それは、「生存圧力」みたいな話もあると思っています。インターネットは「ネットワーク効果」が効くから、プラットフォームがより強くなっている文脈でいうと、「一律性が高く、一番大きいセグメント」は、プラットフォーマーが持っていきます。

 一方で、イネーブルされる前のビジネスとして、「点在していたニッチなニーズのセグメント」は、「フィジビリティー(実行できる可能性)」が合わないと、踏み切れなかったところがあります。プラットフォームとガチンコでぶつからないようにすみ分けたときに、みんなが工夫して「生存圧力」がかかったから、「マイクロエコノミー」が可能になったという見方もできるかなと考えています。

尾原 「ビジネス進化論」的に一番大きいところを一番大きい形で、ビッグプレーヤーが取った先に、「小さいところってまだまだあるよね」となりましたよね。

 しかも、先ほど高宮さんがおっしゃったように、小さい者たちがビジネスを作るための「サーバコスト」や「システムコスト」が減りましたし、「プログラム」すら「ノンコード」でできるようになるという、「サービス提供者側のコスト」が圧倒的に下がりました。

 それに加えて、「マネタイズ」に関しても、「インターネットだけのお金のやりとり」だけではなくて、「リアルでのお金のやりとり」も含めて、「お金の流れを作るコスト」も圧倒的に下がりました。

 さらに、「保有」から「利用」へ、という「シェアリングエコノミー」だったり、「YouTube」のように、PPV(1回ごとの課金)や広告経由でお金が得られるものも生まれました。つまり、「シェアリングエコノミー」の流れ、「ストリーミング」の流れ、「サブスクリプション」の流れがありました。

 このような掛け算で、2周目として「マイクロエコノミー」を誰もが作れるようになってきたことが時代背景にあり、小さな物語を応援する「プロセスエコノミー」を、後押しする環境ができてきたということですよね。