わかりやすいのが、非正規労働者である。日本のさまざまな企業を支えているのが、非正規雇用の方たちであるということに異論はないだろう。低賃金で正社員並みに働かせることができるのに加えて、不況や業績悪化になれば「雇用の調整弁」としてサクッとクビを切れる。企業にとってありがたいことこの上ない存在だ。

 そんな非正規雇用の内訳を見てみると、「女性労働者」が圧倒的に多い。令和元年の雇用者総数に占める非正規雇用労働者の割合を見ると、女性は56.0%。男性22.8%の約2.5倍となっている。

非正規雇用に女性が多いのはなぜか
答えは明白

 では、なぜ非正規労働者には圧倒的に女性が多いのか。男性よりも能力が劣っているということなのか。家事や育児に従事する女性が多いので、どうしても正社員で働くことが難しいということなのか。

 いろいろなご意見があるだろうが、「日本のタリバン」的にはこの一言に尽きる。女性は「安価な労働力」だからだ。

 2019(令和元)年の「民間給与実態統計調査」によると、男性の非正規労働者の年収は226万円、一方で女性の非正規労働者の年収は152万円にとどまっている。

 最低賃金を3%引き上げて全国平均930円にすると決まったとたん、「地方に失業者が溢れかえって、日本経済は壊滅だ!」「そんな高い給料は払えないから、人減らしをするしかない」と中小企業団体が大騒ぎをして、政府に猛烈な抗議をしたことからもわかるように、日本の一部の経営者にとって、労働者とは安くてナンボの存在だ。

 こういう経営手法が当たり前となっている中で、労働者の賃金を極限まで切り詰めることで利益を確保しているような企業が、非正規雇用の男性と女性のどちらを重宝するのかは、言うまでもあるまい。

 つまり、日本の女性の賃金がビタッと低いままで固定され、非正規雇用の半数以上を女性が占めているのは、「低賃金労働に依存している企業」がそのような役割を女性に求めているからなのだ。

 実際、賃金引き上げに強く反対している中小企業三団体は、自民党の有力支持団体である。全国の商工会議所の会員企業は、地域の与党議員にとって非常に頼もしい存在だ。そのような意味では、政治もある意味で、「日本のタリバン」の一味と言ってもいい。