E4系Maxが
引退を迫られた理由

 従来の200系(12両編成)の定員は約900人だったのに対し、同じ12両編成のE1系は1235人と大幅に増加している。これがE4系になると1編成で817人、2編成を連結した16両編成では高速鉄道としては世界最大の1634人を収容可能となった。

 その分、犠牲もある。新幹線といえば2列+3列の座席配置が一般的だが、E1系とE4系は自由席車両の2階席は3列+3列の詰め込み仕様で、しかも座席はリクライニングせず、アームレストも省略されている。子どもたちに親しまれたMaxとは、実はお父さんのための通勤電車だったのである。

 Maxがもうひとつ犠牲にしたものがある。速度だ。2階建て車両の宿命で、車体断面が大きく、重心が高いMaxは高速化が難しいのだ。E1系が登場した当時、東北新幹線の最高速度は240km/hだったが、E4系が登場した1997年から一部の「やまびこ」で275km/h運転を開始。その後、最高速度は2011年に300km/h、2013年に320km/hまで引き上げられ、将来的に360km/h運転を行う計画だ。

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 速度が遅い車両がいると頻繁に追い越しをしなければならず、ダイヤの制約も大きい。最高速度が240km/h止まりのMaxは活躍の場が狭まっていきE1系は1999年に、E4系は2012年に東北新幹線の運用を外れて上越新幹線のみで運行されるようになった(E1系は2012年に引退)。

 しかし、上越新幹線にも高速化の波が訪れようとしている。JR東日本は2019年5月に上越新幹線の速度を従来の240km/hから275km/hに引き上げる方針を発表した。新時代の主役となるのはE7系だ。

 今後の生産年齢人口の減少を踏まえれば、新幹線に求められるのは量より質だ。Maxはオール2階建て故に階段の上り下りが生じ、バリアフリー化の要求も充たせなかった。時代に取り残されてしまった2階建て新幹線はもはや必要とされないのである。Maxは時代のあだ花だったといえようか。