「ただの風邪」ではないが、コロナの致死率は2%

Q:日本人のコロナ患者の特徴はありますか。

 私自身だけでも800人くらいのコロナ患者さんを診ている中、どうしても、目の前の家族、会社、ご近所さんなどに迷惑をかけてしまう、といった社会的な心配が先立って、あたかもがん宣告を受けたかのようにショックを受けて泣いてしまう患者さんもおられます。

Q:死の恐怖ももちろんありそうですが。

 コロナは致死率が低い、単なる風邪だと簡単に言うつもりは毛頭ないです。わからないことも多い分、対策への労力も多いことは事実ですから。しかし誤解を恐れずに申しあげますと、全世界で2億4000万人がコロナにかかり400万人が亡くなっているというのは2%の致死率です。重症化してもほとんど治るのです。がん宣告されて98%は治りませんよね。

 もっと診なければいけない疾患は他にいろいろあります。「通常の医療体制も並行して守っていく」という人がいるのは、そういう意味を込めていると思います。

 ちょっと外国に目を向けますと、死者で一番多いのが、貧困による飢餓です。SDGsでフードロス問題が取り上げられますが、これを貧困国に回せばコロナとはけた違いの多くの死者を救えるかもしれません。東京五輪で大量の弁当が廃棄されたときも、このことに思いをはせました。

Q:手強い変異株との闘いが長期化し怖くて外出自粛しようという人、渋谷の街の活気のように、それでも活動する人、せざるを得ない人が混在する状況をどう見ていますか。

 日本は集団免疫への道半ばであり、これから新型コロナの猛威にしばらくはさらされるでしょう。来年の春はコロナ感染が始まってから3年目に突入します。少しは開放的に行動できるようになっていると期待しています。

 外出自粛は自己防衛本能です。それでも人流が完全に止められない以上、この感染症の流行は避けられません。これは、風邪を止められないのと同様です。

 コロナは大きく分けて4つある風邪のウイルスの1つです。そして、人類の歴史よりもはるかかなたの長い歴史を持って生存し、変異を繰り返しています。さらに、RNAウイルスは遺伝子構造が簡単で変異しやすく、環境適応能力が高いのです。

 これは私の持論なのですが、このような環境適応能力、生存能力の高い、変異のスピードがすさまじい敵を、人類は相手にしていると考えると、時間をかけたいたちごっこが続き、一筋縄ではいかないのは当たり前です。

 あまりに毒性が強すぎると、人類というウイルスの寄生対象が滅んでしまい、自分たちも繁殖できなくなるために、そこそこの毒性にとどまり、人類と共生しているのです。コロナウイルスから見たら、太古の昔からサステナブルな「With人類」なのでしょう。