一読のすすめ

 本書では、著者の仕事上のエピソードも多く紹介されている。例えば、被災地での取材ではまずディレクターと2人で道を歩いて出会った人に「話だけ」を聞き、関係を構築したあとでようやくカメラを回すというものだ。

 また、新型コロナウイルスの感染が広まる中、孤独や不安を感じている人に向けたメッセージを毎日考え、夜中にフレーズが浮かんだら起きてメモを取る生活を続けていたという。一人の人間として相手に真摯に向き合う、著者の誠実な人柄がうかがえる。本書を読めば、著者が発する日々の言葉は、一朝一夕に生まれたものでないことがわかる。

 自分を変えるための「習慣」が注目される現在、「5行日記」などの小さな習慣が結果につながっているという読み方もできるだろう。

 優しく寄り添った言葉にあふれている一冊。ほっこりと前向きになれる読書時間が過ごせるはずだ。

評点(5点満点)

総合3.5点(革新性3.0点、明瞭性4.0点、応用性3.5点)

著者情報

藤井貴彦 (ふじい たかひこ)

 1971年生まれ。神奈川県出身。慶応義塾大学環境情報学部卒。
 1994年日本テレビ入社。スポーツ実況アナウンサーとして、サッカー日本代表戦、高校サッカー選手権決勝、クラブワールドカップ決勝など、数々の試合を実況。2010年2月にはバンクーバー五輪の実況担当として現地に派遣された。
 2010年4月からは夕方の報道番組「news every.」のメインキャスターを務め、東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨などの際には、自ら現地に入って被災地の現状を伝えてきた。新型コロナウイルス報道では、視聴者に寄り添った呼びかけを続けて注目された。ワインエキスパート、SAKE DIPLOMA。

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