やらせ動物レスキュー動画の概要
たくみに視聴者をだます

 まず、やらせ動物レスキューの動画とは何か。説明するまでもないかもしれないが、「危ない目に遭っている動物を助け出す」というのが骨子である。海外で制作されたものが多いが、動物を助けるシンプルな内容であり、英語の字幕も簡単なものなので、使用言語を超えて拡散されているようだ。

「動物にとっての危険」は無数にあって、そこが各動画の腕の見せどころである。動物が溺れている、けがをしている、高所から降りられなくなっている……など、マンガによくありそうなシチュエーションから、ヘビに攻撃されそうになっている、流木に乗って川を流されている、飼い主に包丁でさばかれようとしている……といった劇的瞬間が用いられることもある。ここに動画投稿者がさっそうと駆けつけて、動物を救助するのである。

 救助に至るまでの苦労も細かく描写されるのがお決まりのパターンである。近隣住民への聞き込み調査、入手した情報を元にした捜索、場合によっては住居に乗り込んで飼い主との対決が勃発することもある。

「道を歩いていたら弱った子犬を偶然見つけた」でも、ペットを愛する人からしたら十分なのだが、動画制作者としては視聴数を稼ぐためにそれ以上のドラマを盛り込みたくなるものだろう。また視聴者も、救助に至るまでの展開が緊迫するほどのめり込む。

 動物を救助したあとは、投稿者による動物のケアが始まる。なでたり、ダニを取ったり、傷に薬を塗ったり、である。視聴者は「こんなひどい状態になっているなんて、かわいそうに…」と思い、であるからこそなおさら「よかった…保護されて本当によかったね!」と思う。視聴者にとって投稿者は優しく強いヒーローのごとく映り、投稿者は人気を伸ばしていく。

 なお、やらせの動物レスキュー動画の場合は、そのケアで動画が終わることが多いようである。普通なら保護したあとは、数日~数カ月をかけて病院通いをしたり引き取り手探しをしたり、といった過程が省けないはずであるから、救助後の後日談に関する描写がない動画はやらせの可能性が高い、とされている。