たとえば、先行するA列車と、後続のB列車との間にある踏切内で車が止まってしまい、B列車が20分ほど遅れてしまったとする。だが、A列車にとってはこの踏切を通過した後の出来事であり、運行に支障はないはずだ。

 ところが、「後続の列車が踏切事故で遅れているため、しばらく停車します」という車内アナウンスが、A列車に流れることがある。後続列車の遅れが、どうして自分たちの乗っている列車に影響するのだろうかと疑問に思う、というより多少憤る人も少なくないだろう。なぜ、先行列車が後続列車の影響を受けなければならないのか。

 後続列車を待たないでA列車がどんどん先を走っていくと、A列車とB列車との間に長い空白時間が生じ、後続のB列車に乗客が集中することになる。そうするとB列車は混雑を来し、動きが取れなくなる。

 乗り降りするのにも余計に時間を要してしまうので、遅延はさらに拡大する。そのため、先行するA列車が後続のB列車を待つのである。

 こうすることによって、乗客を分散させることができ、B列車に乗客が集中することを防ぐことができる。それが遅延の拡大を防ぐことにもなる。これを「運転間隔の調整」と呼び、列車の遅れが路線全体に広がっていくことを食い止めるのだ。

 運転間隔の調整をスムーズに行うためには、どの列車が現在どこに停車しているのか、間隔はどれだけ空いているのかなどを把握し、それを運転士に通知しなければならない。すべての列車が各駅停車であれば運転間隔の調整もやりやすいが、急行や特急も走っている路線では、大変な作業である。