仮に運用益を加味するケースでも、期待している金額のせいぜい半分が限度になるでしょう。Hさんの運用能力等が定かではありませんが、今回はHさんが期待している半分の金額である10万円で試算を行うことにしましょう。

 毎月10万円、年間120万円の収入に対して、移住先での支出はいくらになるのか定かではありません。そのため、今回はHさんが移住先として考えている「物価の安い国」を「Hさんの年金収入と運用益以内で生活できる国」として試算していきます。

 Hさんの年金額は、奥様の加給年金を加えても月12万~13万円くらいではないでしょうか。年間にすれば144万円~156万円になります。毎月の運用益は前述の通り、年間120万円とします。合計すると264万円から276万円がHさんの年間収入となります。この金額以下に生活費が収まれば金融資産からの取り崩しはありません。

 Hさんは年金と運用益で生活費を賄うことができると考えて、リタイア後に物価の安い国で暮らすことをイメージしていると推測されます。ただし、年金の受け取りが始まる65歳までの3年間は運用益しか収入がないため、この期間の生活費は年金分の金額を金融資産から取り崩すことになります。年間144万~156万円の3年間分ですから、432万円~468万円が取り崩されます。

 Hさんが現在保有する金融資産は、現金1500万円、定期預金2000万円、投資信託2000万円の5500万円です。その他、会社経由で資産を作っているのかもしれませんが、記載がないため試算では考慮しません。保有する金融資産5500万円から取り崩し額の上限である468万円を差し引くと、残りは5032万円です。