子どもは遊びで成長する。頭・心・身体の発達を促す、のりもの遊びの「効果」

子どもたちの体力低下が一層深刻化している。学校で測定する体力テストの結果からも、親世代と比べて今の子どもたちの体力低下が著しいことがうかがえる。その原因として、子どもたちが外で遊ぶ機会が激減していることが挙げられる。

山梨大学理事・副学長で、立つ、歩く、走るといった「子どもの運動神経がよくなる36の動作」を提唱する身体教育学の専門家、中村和彦氏によると、子どもは夢中になって遊ぶことで「頭」「心」「身体」の三位一体で成長するという。

のりもの老舗メーカー「アイデス」の中井範光社長は、こうした中村氏の考えに深く共感し、自社で制作する三輪車や自転車に活かしている。中村氏と中井氏の対談を通じて、子どもの成長に「遊び」が果たす役割、そしてのりものを使った遊びの効果を考える。
 

三輪車や自転車は、「頭」「心」「身体」のすべてを駆使する遊び

中井 私たちは、会社のミッションとして「毎日の運動遊びを提供し、幼少期の成長に貢献すること」を掲げているのですが、子どもたちが遊びながら身体を動かす環境は狭まる一方だと感じています。中村先生は、今の子どもたちを取り巻く問題をどのように考えているでしょうか。

中村 現代の子どもたちが抱える問題は、とかく体力の低下に目が向きがちですが、それ以外にも重要な能力が低下していることに注意しなければなりません。

 1つ目は、学力の低下です。学力というと、成績や偏差値で表される知識や記憶力の問題と捉えがちですが、ここでいう学力とは、思考力や判断力、表現力、そして学ぼうとする力、学びを継続させる力といった認知的能力を指します。子ども自身が考える、そして判断するといった認知的な発達が低下しています。

 2つ目は、コミュニケーション能力の低下。コミュニケーション能力というと、挨拶ができる、国語や英語といった言語力と誤解されがちですが、ここでは人を思いやる、人を慈しむといった情緒や社会性といった非認知的能力を指します。つまり心の発達に問題があるのです。

 この頭と心の発達の問題と合わせて、身体運動の発達、すなわち体力の低下があります。これも、全国で実施されている「体力・運動能力調査」のデータが低下しているのが問題ではなく、基本的な動きが習得されずに、運動量(身体活動量)が減少していることに注意しなければなりません。その結果、子どものケガや生活習慣病、そして感染症に罹患するといったリスクが増大しています。

 子どもの思考力やコミュニケーション能力、そして運動能力を築き上げるのは大人の役目です。子どもにとって一番身近な大人は親。その次に保育士や幼稚園の先生。子どもはそうした大人たちの物の考え方を見ています。日本は、大人が子どもに思考力や人を思いやる力を与えることができなくなっているという側面で「気持ちのない国」になってしまったと言えるでしょう。

 子どもの発育は、こうした「頭」「心」「身体」の側面をトータルで考えないといけません。三輪車や自転車の遊びは、子どもたちが頭を使い、工夫をして、周囲を見て、「乗れるようになりたいな、できなかったら悔しい」といった心が動く。そして身体を使って乗る動作をする。つまり、「頭」「心」「身体」をすべて使っているのです。

行動する「距離」を広げ、子どもに「新たな発見」をもたらすのりもの遊び

中井 うちの社名「アイデス」は、「愛」に由来するものです。愛に対する考え方は親の教育、考え方から大きな影響を受けています。それは、感謝という言葉に集約されます。親からの愛に感謝すると共に、子どもたちへの感謝、そして社員や商品をお買い上げくださるお客様への感謝につながる。今の世の中には、こうした愛や感謝の気持ちが足りないのではないか、と危惧しています。

 愛や感謝を持って、幼少期の最適なのりもの遊びを通じ、幼少期の子どもの本来の能力を伸ばすためのお手伝いをする。そのために、アイデスの三輪車や自転車はさまざまな工夫を凝らしています。

 例えば、1歳からのりものにチャレンジできるD-bike mini plusは、通常の三輪車と違って、前輪が2輪で後輪が1輪です。子どもは頭が重いので、前輪はハンドルを握った子どもが体重をかけても転びにくいように安定性をもたせるためタイヤが2つあり、 後輪は足で蹴って進んだときに足がぶつからないように1つのタイヤにしています。

 三輪車や自転車を作る時に目標としているのは、のりものに対する怖さをなくし、「乗りこなせた」という子どもの成長を促すところまで見据えることです。

 しかし、のりもの体験をする際、こぐと足がぶつかるといった問題が出てくると、子どもがそこに気を取られてしまい、嫌になってしまったら本末転倒です。ですから、三輪車の前輪を2輪にする、あるいは自転車のペダルをワンプッシュで取り外しできるようにするなど、三輪車や自転車が持つ構造上の問題を排除し、「乗れた」という成功体験をつかみやすくしています。

 また、のりものを乗りこなせるようになると、行動する距離が飛躍的に伸びます。そうすると視野が広がり、新たな発見につながります。歴史を振り返っても、のりものの進化によって人間の冒険心が加速し、世界は大きな変革を遂げています。中世から近世にかけて船が発達して新大陸の発見につながりましたし、現代には飛行機が登場し、ナスカの地上絵などの新たな発見につながりました。

 距離を乗り越えて新しい発見に至る時には、すべてのりものが介在している。私たちは、子どもたちに「できた!」という自信を持ってもらい、子どもにとって、のりもの遊びが心と体の成長に新しい発見をもたらすものだと思って商品開発に携わっています。

 そうしたのりもの体験は、子どもにとって面白くなければいけないと思っています。遊びを通して子どもたちは成長していきますから、遊びは子どもたちの未来にも良い影響を与える、と考えます。遊びといっても、 道具を使う遊びもあれば、使わない遊びもあります。それぞれが子どもの成長に寄与する効果を持っています。道具を使う遊びの中でも三輪車や自転車など、のりものを使った遊びはおもちゃやゲームでの遊びとは少し異なる、のりもの遊びならではの効果があります。

子どもが毎日自発的に遊び、子どもの認知的発達を促すのりもの遊び

中村 乳幼児期の運動能力は、基本的な動きを遊びの中に取り入れることで無意識に高める必要がありますね。

 中井社長のおっしゃる通り、子ども自身が体を動かすことを「面白い」と感じられるかどうかが必要です。乗りこなすのが難しくても、三輪車や自転車に乗ろうとするのは、子どもが面白そうと感じるからなんですね。面白いからのめり込めるし、上手くいかなくても「またやってみよう」と子どもたちの心の中から湧き上がるように導いていく。その仕掛けを作ることが大切です。

 そして、遊びながら乗っているうちに、早く遠く移動できることを知る。最初から「運転技術を磨いてうまく乗りこなそう」なんて思う子どもはいないですから。

 ですから、のりものを使った遊びは、身体だけではなく、工夫する、知恵を働かせるといった認知的能力、すなわち頭の発達につながるわけです。

 頭の発達といっても、日本では学力の向上と受け取られがちですが、それはあくまでも結果論であり、学力以上に認知的発達の効果が遊びにはあるのです。

 子どもが最初からのりものを乗りこなせないのと同じく、最初から正解を出すことなどできません。そして、大人のように経験がないから、判断することができない。それがいいのです。経験をもとにいろんな考えを知り、だんだんと自分で考えるようになり、判断する。それが人間力、生きる力につながるのです。

 子どもたちが面白いと感じ、自発的に毎日遊んでしまう。そういうのりものをアイデスさんが作ってらっしゃるのだと思います。

中村和彦◎山梨大学 理事(教学・国際交流担当)・副学長 発育発達学、保健体育教育学をベースに、一貫して子どもの心と身体の問題についての研究を続け、特に子どもの遊びの重要性に関する調査・研究では日本の第一人者。 NHK・Eテレの番組『からだであそぼ』『あさだ!からだ!』や、『おかあさんといっしょの』たいそうコーナー「ブンバ・ボーン!」、2020年応援ソング『パプリカ』などの監修をつとめ、子どもの豊かな心と健やかな身体の育みの大切さを呼びかけている。著書に『子どもの体が危ない!』(日本標準)、『子どもの遊び・運動・スポーツ』(市村出版)、『四快のすすめ』(新曜社)、『運動神経がよくなる本 バランス・移動・操作で身体は変わる!』『パプリカを踊ると子供の運動能力は上がる』(マキノ出版)など。

中井 テーマパークや遊園地に行って遊ぶのは、非日常空間で遊ぶ楽しさがあります。しかし、私たちは「毎日面白く遊べるアトラクション」が重要だと思っています。子どもの運動習慣は、毎日の遊びの中で身につくものであり、それが大人になっても「人生の糧」となるような社会貢献をしたいと思っています。

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