理論的には救済されるが…
習政権の「意思決定」次第

 今後の展開として、エバーグランデは救済され、同社の債務危機はLTCMショックのような展開に向かう可能性がある。理論的に考えると、中国経済にとって、エバーグランデは「大きくてつぶせない」企業に位置付けられる。共産党政権は債務再編の専門家を起用したと報じられている。一時的に中国の不動産や金融セクターに影響が出たとしても、ドミノ倒しのように経済全体に深刻なショックが波及する展開は防がなければならないと考えているようだ。そうした見方から、9月中旬時点で、中国政府がエバーグランデを救済し、ショックは短期的かつ限定的な範囲に抑え込まれると考える投資家は多かった。

 ただし、そうなるとは限らない。共産党政権の対応方針が明確になるまで、救済が実行されない可能性は排除できない。

 特に、貧富の格差が拡大した影響は大きい。エバーグランデの経営陣の中には、前倒しで理財商品を償還し、自分の資金を回収した者がいた(のちに撤回)。貧富の格差が拡大する状況下、共産党指導部がエバーグランデを救済するとなれば、世論の共産党指導部批判は一段と激化する恐れがある。

 問われているのは、習政権の実力だ。つまり、不動産バブルとその後始末にしっかりと対応して金融市場と経済の混乱を食い止めつつ、民衆の不満が高まらないようにできるか否かだ。共産党政権が世論の批判を避けようとするあまり、エバーグランデへの公的資金の注入など救済が遅れる展開は排除できない。万が一にも、救済が実施されなければ、世界経済には無視できない下押し圧力がかかる恐れがある。

 理論的に考えればエバーグランデは救済されるべきだ。それは、大規模な混乱が中国内外の金融市場に広がる展開を防ぎ、中国をはじめ世界経済がそれなりの安定を維持するために欠かせない。それが実現するか否かは、共産党政権の意思決定次第だ。