そもそも、発想ってどうすればできるのでしょう。一見答えのない問いですが、その探求を積み重ねていくと、どうやら明確なパターンが浮かび上がってきました。そしてこれはデザインだけでなく、あらゆる創造性に関わるようなのです。パターンがわかれば、僕も優れたデザイナーになれるかもしれない。さらに突き詰めれば、誰もが創造的になれる教育ができるかもしれません。そんな青い夢の詰まった修士論文を書いたところ、僕の論文は後輩たちに爆発的な人気を得て、大学の図書館から盗み出される事態にまで発展してしまいました。そして2冊目の論文を再度収めて卒業後、そのままデザイナーとして独立して現在に至ります。

 それから15年がたち、僕の中の仮説は確信に変わりました。創造性は教えることができる。そしてその方法は現在の教育には全く足りない。だからこそ創造性教育は、体系化する価値があるはずです。

 そして文明が持続不可能と予測される現在、私たちはさまざまな仕組みを作り替えるべき時代を生きています。問題の背景を理解し、新しい代案を出せる人を増やすためには、創造性教育の更新こそが最もレバレッジの効く手段のはず。そんな確信が、今日の進化思考につながっています。

そもそも「創造性」ってなんだ?

創造とは、いったい何をすることなのか。
その意味を、私たちは理解しているのか。
(『進化思考』P.10から)

 考えてみれば、生物の中で人間だけが道具を自在に創造できるのは、とても不思議なことです。なぜならヒトと約98%同じDNAの生き物であるチンパンジーですら(ごく原始的な道具以外には)モノを創造することができないのです。しかもホモサピエンスになってから約20万年間のうち、5万年ほど前までは石器時代なので、ヒトが闊達(かったつ)に新しい道具を作れるようになったのは、長い人類史の中ではごく最近のこと。つまり突然、さまざまな道具を作り出すことができるようになった私たちの創造性は、自然界でいえばナゾの超常現象なんです。でも……。

ヒトの創造も自然現象であるはずだ。
(『進化思考 』P.37から)

 人も自然の一部ですから、そう考えるのが自然です。そこで自然界に近い現象はないのかと糸口を探すと唯一、人の創造性に似た現象がありました。それが生物の進化です。

進化の仕組みは「ボケとツッコミ」の繰り返し

 では生物の進化とは、一体どんな仕組みなのでしょうか。一言で説明すると、進化とは偶然の変異と自然選択による適応を何世代も繰り返して発生する現象です。この全く違う二つの現象が組み合わさることで、進化は自然発生します。