スマホ持参の患者やその家族はたくさんいます。待合室で一心不乱にスマホをいじっている人を前にすると、気やすく声をかけることは難しく感じるでしょう。「スマホに熱中しているようだだから、もう少し待ってもらっても大丈夫だな」と思っていたところ、大きな落とし穴があったのです。

 堪忍袋の緒が切れたのか、突然鬼のような形相で受付に詰めかけ、「どれだけ待たせるんだ!!」と怒りだしてしまったというケースです。

 実は、スマホに熱中する落ち着き払った表情の裏に、いまにも爆発しそうな不安と憤りが隠されていることも多いのです。スマートフォンを触っていたとしても、暇つぶしや娯楽、待たせても大丈夫と決めつけないで、彼らの不安や心配事にも注意(配慮)することも重要です。

「他の業務もあるのに、さらに気を配らないといけないの? 正直、面倒……」と思うかもしれませんが、これは火事にならないように火の元を確認するようなものです。「面倒なこと」の中にこそ重要な要素が含まれています。自己防衛の一つだと思ったほうがリスクは圧倒的に小さくなります。大切なのは、スマホやパソコン画面ではなく、これまで以上にリアルに五感を使って、患者やその家族の様子を見守ることです。