第一の効果は
勤労者世代の「手取り所得の増加」

 河野氏の年金改革案は、将来の公的年金の支給額が高齢者の誰にでも一定額以上に最低保障される点が強調されがちだ。しかし、政策を実施したときの経済に与える効果は、このことが第一ではない。

 何といっても大きいのは、現役世代の収入から毎月差し引かれている、現在「月額一律1万6610円」の国民年金(基礎年金)の保険料がなくなって、政策の実施月から直ちに彼らの「手取り収入」が増えることだ。サラリーマンでいうと、給与明細の数字が変わって「手取り」が増えるのだ。

 彼らが毎月使えるお金は、正確に1万6610円増えるわけではなく、それぞれの所得に応じてこの金額に所得税・住民税が掛かるので、その効果は個々人の所得によって異なる。けれどもそれは、所得が低い人ほど大きなメリットを受けるということだ。現役世代の勤労者の所得を一律に増やすのだから、「河野年金」は効果において第一に「勤労者のベーシックインカム」なのだ。

 税金や社会保険料などの公的負担を論じる際に、しばしば「逆進性」が問題になる。例えば、所得が低い人ほど消費性向が高いので消費税は逆進的だ、といった議論だ。こうした観点から考えると、所得に関係なく一律に保険料を徴収する国民年金の逆進性は、とても消費税の比ではないすさまじさだ。

 この負担構造を変えるだけで格差対策になる。手順としては、いったん基礎年金保険料の全てを国庫負担にして、その財源を調整することで実質的な「再分配」の大きさを調整することができる。公平でかつ速やかに実行できる格差対策だ。