強力なデフレ対策とするために
絶対やってはいけないこととは?

 もう一点肝心なことは、この場合の財政負担増(高市氏によると12兆3000億円)は、当面赤字国債で賄うことがデフレ対策として適切であり、それなりに強力ではないかと期待されることだ。

 物事には適切な時期がある。デフレ脱却のために金融緩和を後押ししたい現状で、直ちに増税を行うことは不適切だ。当面は、国民に対してなるべく公平な需要の追加を財政的に行うことが適切だ。

「河野年金」に対して、長期的に追加的な財源を問うことは重要だが、基礎年金保険料の全額国庫負担化と「同時に」、同程度の規模の増税を行うことは全く不適切だ。ここは厳しく区別する方がいい。

 多くの現役世代の勤労者が手にする手取り所得が毎月1万数千円継続的に増えることは、景気対策として規模的にもそこそこであるし、彼らの安心感を通じた消費拡大に資するだろう。加えて、対象者の選定が概ね公平だ。低所得な勤労者はお金を必要としている。文句はあるまい。

 金融緩和を後押しする政策として好ましい上に、実施に当たって「即効性」がある。

「来年度から基礎年金は全額国庫負担だ」と次の予算で決めたら直ぐに実施できる。インフレ目標が十分達成されるまで財源は赤字国債でいいし、それが適切なのだ。

 なお将来の財源は、景気にマイナスに働きやすく逆進的でもある消費税の増税よりも、富裕層の「資産に対する課税強化」がいいだろう。「ゆっくり」というわけにはいかないが、検討の時間は1〜2年ある(デフレが解消するまでだが、急げ!)。