世界と比較してみても、マスコミを盲信する日本

 よくネット民の皆さんは、「マスゴミなんて信用できない!」とおっしゃるが、そのような方はマイノリティで、実は我々は世界で屈指の「マスコミを盲信する民族」なのだ。

 2020年9月時点で分析可能な77カ国を対象にした「第7回世界価値観調査」によれば、「新聞・雑誌」を信頼していると回答した人が日本は69.5%。ベトナムが79.3%、フィリピン71.2%、バングラディッシュ71.1%に次いで第4位。また、テレビや新聞のニュースを毎日情報源としていると回答した人が48カ国中でナンバーワンとなっている。

 ここまでマスコミに絶大な信頼を寄せている先進国ではかなり珍しい。例えば、「新聞・雑誌」の信頼度はドイツは36.6%で32位、イタリア30.2%、フランス30.2%で46位、アメリカ29.7%で47位、イギリス13.7%で75位とG7諸国では日本と逆で「信頼しない」が7割となっている。

 ここまで言えば、筆者が何を言わんとしているかお分かりだろう。どの国でもマスコミは最高権力者を厳しく批判する。それが「権力の監視」を掲げる彼らの仕事だからだ。

 ただ、マスコミが批判したからといって即座に、国民はリーダーを引きずり下ろそうとしない。先進国の多くはマスコミを信頼している人が3割程度なので、多くは「もうちょっと長い目で見るか」となる。時には、トランプ支持者のように「フェイクニュースを流しやがって」と批判するマスコミを逆に返り討ちにする人も現れる。

 しかし、日本人はその真逆で7割がマスコミを信頼している。テレビや新聞を毎日情報源にしている割合は世界一だ。なので、テレビや新聞が毎日、政権批判を繰り広げると、いともたやすく世論が変わる。支持率もガクンと落ちる。そのニュースを見た有権者によって、選挙も連敗が続く。

 選挙で負けるということは、政治家にとってある意味、政治よりも深刻だ。生活がかかっているのだから、党内の派閥が手に手を取り合って、「勝てない首相」を引きずり下ろす。「菅おろし」もそういう力学で起きた。

 つまり、表面的には、短命首相に引導を渡しているのは、支持率低下と自民党内の派閥の力学だが、そのきっかけをつくっているのは、「世界トップレベルで国民から信頼されているマスコミ」なのだ。

 そう考えていくと、岸田内閣が長期政権になるか否かは、ジンクスよりもマスコミにかかっている。