ファーウェイ副会長釈放、中国が「政治的迫害だ」と主張する理由と米国の策略Photo:VCG/gettyimages

中国の通信設備大手・ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)創業者の任正非最高経営責任者の長女で、同社副会長でCFO(最高財務責任者)の孟晩舟氏が9月25日、カナダで釈放され、中国・深センに帰国した。2018年12月にカナダのバンクーバー国際空港で拘束されてから約3年、米国と司法取引をしたわけだが、中国では逮捕そのものが批判されている。中国側の視点を考慮しながらこの事件を見ると、複雑な国際関係と思惑が見えてくる。(ジャーナリスト 姫田小夏)

米中の貿易上の問題なのか、
それとも政治問題なのか

 孟晩舟氏が、足にはめられていた黒いGPS装置からついに解放された。

 中国国民は「有罪を認めていない孟氏が釈放された」と孟氏の帰国を歓迎。孟氏は「無罪」を主張し続けており、争点となる「銀行に対して誤解を与えたかどうか」についても否認してきた。

 しかし、実際には米司法省は孟氏に容疑を是認させ、代わりに起訴を猶予するという司法取引が行われた。英BBCは、「複数の銀行詐欺罪については無罪を主張したが、イランでのファーウェイの事業について銀行に誤解を与えたことは認めた」(中国語版、2021年9月24日)と報じた。

 孟晩舟事件の難しさは、「貿易上の問題なのか、政治上の問題なのかよく分からない」という複雑さから来ている。中国側はこの事件を「政治的かつ地政学的な罠(わな)」だと一貫して主張してきたが、その根拠はどこにあるのだろうか。3年前の“孟晩舟事件”をもう一度振り返ってみたい。