10人に1人といわれる左利き。「頭がよさそう」「器用」「絵が上手」……。左利きには、なぜかいろんなイメージがつきまといます。なぜそう言われるのか、実際はどうなのか、これまで明確な答えはありませんでした。『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社刊)では、数多くの脳を診断した世界で最初の脳内科医で、自身も左利きの加藤俊徳氏が、脳科学の視点からその才能のすべてを解き明かします。左利きにとっては、これまで知らなかった自分を知る1冊に、右利きにとっては身近な左利きのトリセツに。本記事では本書より一部を特別に公開します。

「左利きは直感がすごい」脳内科医が断言する新事実Photo: Adobe Stock

左利きは「直感」がすごい

 左利き独特の脳の使い方が生み出す、すごい個性の1つ目が「直感です。

 明確な根拠はないし理由もうまく説明できないけれど、「なんとなくこっちがいい」「どういうわけか気乗りしない」などと感じることはだれにでもあるでしょう。こうした言葉にならない脳からの知らせが「直感」です。

 しかし、多くの人は「“直感”は単なる衝動や思いつきであり、当たったり外れたりするもの」と考えて存分に活かしていません。私は、これはとてももったいないことだと考えます。

 近年では、直感に従って決断をすると、論理的に考えるよりよい結果が出るという研究結果が数多く発表されています。

 たとえば、オランダの心理学者であるアプ・ディクステルホイスが、サッカーの専門家とそうでない人を集めて、サッカーリーグの試合の結果を予測させた実験があります。

 その結果、最終的な判断を下す前に2分間熟考する時間を与えられたグループより、試合とまったく関係ない課題で意識をそらせて判断させたグループのほうが、サッカーの専門家とそうでない人の2群ともに、より正確な結果を予測しました

 さらに、サッカーの専門家は瞬時に判断させたほうが、時間を与えたときよりも予測の精度が高かったのです。〔*〕

 つまり、サッカーの専門家でも、必要以上に目的とすることに時間をかけすぎると、余計な情報が加わり、かえって予測の精度が悪くなることを示しています。

右脳と左脳が扱う情報の違いとは?

 私は、「直感」とは意識では覚えていない膨大な情報を蓄えている脳のデータベースから、精度が高く、より正確な情報を選択して導き出された結果だと考えています。

 ここで、右脳と左脳が扱う情報の違いを説明しましょう。

 右脳は、モノの形や色、音などの違いを認識し、五感にも密接に関わっています。一方で左脳は、言語情報を扱い、計算をし、そして論理的、分析的な思考をする機能を持っています

 つまり、右脳は、視覚や五感をフルに活用した、言語以外のあらゆる情報を無意識のうちに蓄積している巨大なデータベースです。そのため、常に左手から右脳に刺激を送り続けている左利きは、膨大なデータからベストな答えを導き出す直感に優れているのです。(関連記事:最新脳科学でついに決着!「左利きは天才」なのか?

「左利きは直感がすごい」脳内科医が断言する新事実イラスト/毛利みき