その4:「その日」が来てしまったときに
やっておくべきこと

 では実際に激しい豪雨などに見舞われ、河川の氾濫などが考えられる場合にできることとは一体なんだろうか。ここでは被害が想定される際に、家庭内で行える取り組みについて解説する。

 まず、被害が深刻になる前に家の周りを保全しよう。鉢植えや物干し竿、自転車、バイク、プランターなど、外にあるものを家の中に入れておくのだ。プロパンガスのボンベも固定しておくとより安全だ。浸水などが考えられる場合、1階にある電子機器なども可能な限り高い場所か2階に移しておきたい。

 また、家の中への水の侵入を防ぐために、玄関前やフェンス前に土のうを設置しておくことも重要だ。浸水しそうな場所にレジャーシートで包んだ水の入ったポリタンクまたはプランターを置くのも有効な手段である。それらの材料が家の中にない場合、簡易的ではあるが、止水版として長い板状のもの(ボードやテーブルなど)で代用することができる。

 一軒家の場合、床下浸水を防ぐために通気口も土のうで防いでおこう。さらに、一部の保険会社では床下浸水に保険が適用されない場合がある。これに関しても事前に保険会社に確認しておくと良いだろう。

 また、これまでは「災害時はお風呂に水をためよう」というルールが一般的だったが、近年は変わってきている。

 理由としてはまず、小さい子どもがいる家では、転落や転倒などの事故につながりやすいということがある。子どもは頭が重たいこともあり、風呂場での不慮の事故は後を絶たない。

 他にも、お風呂に水をためておくことはカビの繁殖につながる。また、風呂水は一晩置くと細菌数が数千倍にも増加するといわれている。これは飲料水としての使用はおろか、生活用水としての使用にも向いているとは決していえない数値である。

 そのため、普段から1人1日3リットル×最低3日分のペットボトルや、給水用ポリタンクを備蓄しておくことを推奨する。

災害時には一瞬の判断が大事
いざとなったら迷わず避難を

 もちろん、これらの対策をすべて行ったからといって、水害被害を回避できるわけでも、絶対に安全を確保できるという保証もない。

 常に情報のアンテナや注意を張り巡らし、気象庁からの警報や注意報、降水量・河川水位情報、ライフライン情報および消防団や警察署、市町村からの情報をこまめにチェックしておくことは必要不可欠だ。また、崖の亀裂や河川の水位の変化など、家の周りの環境の変化にも注意しておきたい。

 1秒の遅れが致命傷となる自然災害。深刻な被害が想定される際には、正常性バイアスにとらわれることなく、速やかに判断・行動することが運命の分かれ道となるだろう。