機密情報を外部に漏らした広報部長の責任は……

<B広報部長に対する懲戒処分について>
 下記の項目について、就業規則に明記があればB広報部長への懲戒処分を行うことは可能である。
 (1) 家族に機密情報を漏らしたことに対して、秘密保持義務違反とすること。
 (2) (1)が原因で、CのCM出演に関してCの所属事務所と取り交わした約束を守ることができず、その結果Cの事務所に迷惑を掛けたことにより、会社の信用を失墜させたこと。
 (3) もし、(2)に関してCの事務所から損害賠償額の請求があり、会社が賠償金を支払った場合は会社に損害を与えたことになること。
(4) なお、(1)が原因で新製品の販売に影響をきたし、その結果会社が予測した売上目標額に届かなかったことを理由としての損害賠償額の請求については、会社の売上目標額はあくまでも期待数値であり、たとえ順調に発売されていたとしても達成できるとは限らないし、現段階では会社に実損が出ていないことを考慮する必要があること。

「よく分かりました。この件は後で検討します。実は他にも気になることがあります。Cの事務所に対して損害賠償は生じますか?」
「少なくとも情報を見たマスコミ等からの問い合わせ対応に苦慮していることへの謝罪は必要かと思われます。あとは事務所との契約内容によりますが、損害賠償額の有無も含めて先方とよく話し合ってください。もし、万が一必要になったら知り合いの弁護士を紹介しますよ」
「それは助かります。しかしこうなった以上、乙社が手を打ってくる前に新製品を販売することにします。しかしCのCM出演はボツになったし、どう宣伝していこうかなあ」

 E社労士はある提案をした。

「それならCMに社員を起用するのはどうですか? 実例もありますし、意外と消費者に受けることも多いですよ」

 E社労士のアドバイスを受けたA社長は、翌日Cの事務所を訪れ、事務所の社長にこれまでの経緯を説明し、事後対応について迷惑を掛けたことを謝罪した。事務所側では問い合わせてきたマスコミやネット民に対して「この情報はデマです」と説明しているので、甲社に問い合わせが来た場合も同じ対応を求めるとし、A社長は即座に承知した。またCM出演の口約束はしたが、具体的なCM撮影のスケジュールは未定で、Cの仕事に穴があいたわけではないため損害賠償の話は出なかった。