40~50代社員が抱える不安と課題
「給与・肩書」物差しを外すことが大事

 40〜50代ミドル社員も90代まで生きることが視野に入ってきています。この世代層の多くは、終身雇用と年功序列の会社に「就社」意識で就職し、会社の命じるままに過酷な残業や異動や転勤も厭わず、滅私奉公で一心に働いてきました。そのことで順調に給料や職位も上がり、定年まで安定的に働けると考えてきたのです。

 しかし、平成不況が長引くなか、限られた管理職ポストに就くことは容易ではなく、管理職になったとしても役職定年や定年後再雇用の時期を迎えればプレーヤーの立場に戻り、かつての後輩や部下の上司のもとで働く状況になります。給与も減額され、モチベーションは下がるばかり。それでも、定年まで我慢すれば自由なセカンドライフが待つと期待していました。

 ところが突如「人生100年時代」といわれ、60歳代で定年を迎えた後10年前後の余生を年金生活で悠々自適に暮らす人生モデルは、もはや過去のものとなったのです。職業人生の最終コーナーに入ったと思いきや、そこから改めて60代以降のキャリアや働き方を考え直す必要が出てきたということ。これは、会社一筋でキャリアを築いてきた社員にとって驚天動地な転機です。ただでさえ、ユングのいうミッドライフクライシス(中年の危機)の時期でもあり、人生における最大級の関門にぶつかっているといえます。

 ミドル社員はこの難題にどう取り組むべきでしょうか。まず大事なことは、会社依存から脱却し、自分の職業人生のハンドルを自分で握る覚悟を決めることです。キャリア自律です。自律とは文字通り自らが律すること。自分がコントロールする自己決定によるキャリアづくりであり、「定年=リタイア」ではない時代に働き、生きる土台です。

 ただし、これは決して早期退職や安易な転職を勧めるものではありません。自分が将来にわたり本当にやりたいことは何か、この先20年、30年と生涯をかけて取り組みたいことは何かを見定め、自分のキャリアの軸を定めるのです。そして、その実現のために今の職場で磨けるもの、他の方法で身につけるものを明確にして、実行プランを立てることです。

 その際大事なことは、仕事を意味づけるうえで、「給与・肩書」物差しを外し、「働きがい」物差しで考えることです。世間体ではなく、自分の気持ちを第一にするのです。また、自分の強みや持ち味は何かを再確認することです。社会人として長らく働くなかで、得てきたこと築いてきたことは少なくないはずです。それを棚卸しして再確認したうえで、自分の強みを活かせる場と方法を設計するのです。