8月下旬に米国ほか各国の飛行機がカブールに向かったとき、アフガニスタンからの出国を希望する大勢の人たちが空港に殺到した。飛行機にすがりつき、上昇する機体から振り落とされた人までいた。このとき、空港の外には何千人ものアフガニスタン人たちがいて、何重にも取り囲んでいたという。

瀬谷「米兵に向かってビザを見せながら『なんとか入れてくれ』と叫び続ける人、混乱する現場で親とはぐれてしまった4歳の男の子もいました。さらに空港付近で起きた爆破テロにより、10歳の男の子は腕を吹き飛ばされてしまいました。しかし、知識層である医者はどんどん退避してしまっている上、女性の医者はタリバン政権下では安全上のリスクがあるため出勤していないので、彼を治療する医者さえいない状況」

 このような状況下、日本の自衛隊をはじめ、各国の軍用機が混乱するカブール空港に入ったものの、結局定員の半分以下で飛び立たなければならない結果となっている。

瀬谷「米国やカナダ、イギリスなど、各国が長い間アフガニスタン国内で雇用してきた人たちというのは、その関係性によって命のリスクを抱えている人たちもいます。そういった人たちも含めて、ハイリスクな人たちを救うプログラムがあるのですが、それ自体に今人が殺到していて、すべての人たちをまだ事務的にさばけていない。このプログラムはもちろん、命の危険があるぐらいの保護すべき理由がある場合は、仮にパスポートがなくても受け入れるということをうたっています。ただ、まずは退避させるルートがない。タリバンが現地のアフガニスタン人たちの出国を許可するのかどうかというところも大きな課題です。その人たちの名簿をタリバンに渡した時点で居場所も名前も特定されてしまう。ちゃんとその人たちが安全に飛行機に乗れる、陸路で出られるなどの確証がないとなかなか難しい。

 かつてアフガニスタンで働いていたり、アフガニスタンに友人や家族がいたりする友人知人が世界中にいて、私たちも、なんとかできないかということで活動しています。まずは現地にこれだけの保護すべき人たちがいることを、G7とか世界に対して訴えて、退避の試みを求めるアドボカシー(編注:社会的弱者の権利を擁護する運動)を行っているところです」