マスコミが触れ回る「若者の政治離れ」
今も昔も政治に関心がなかった

 今の60〜70代の方たちは忘れてしまっているかもしれないが、実はこの世代の人たちがロン毛の若者だった時代、当時の中高年たちも「なぜ最近の若者は政治に興味が持てないのか」と首を傾げていたのだ。

 確かに、今の60〜70代は学生運動をやっていた人も多いが、「学生運動」=「政治に関心が高い」ではない。このような活動にのめり込んでいた若者は「体制打破」や「革命」を掲げていたのであって、「あなたの一票で政治を変えよう」みたいな民主主義的な政治活動をしていたわけではないからだ。実際、当時の政治の場は「青年不在」とよく言われた。

 例えば、今から56年前の参院選。「読売新聞」(1965年6月22日)によれば、ある政党党首が都内の駅前で第一声をあげた時、聴衆が約300人集まったが、若い人は数えるほどしかいなかった。しかし、すぐ脇に並ぶパチンコ屋は若者で満員御礼だったという。これは東京だけの話ではない。

<先週からはじまった各地の立ち会い演説会をみても「聴衆は五十歳ぐらいばかり」(三重)「ほとんど四十以上の人たち」(愛知)「中年層が多く、老人の姿が目立つ」(新潟、秋田)「大部分は中年以上の男性」(神奈川)と“青年不在”はどこでも一般的」>(同上)

 日本の高度経済成長の起爆剤なんて言われた東京五輪の翌年ですでにこの有様だったのだ。もちろん、投票率は今の若者と比べたら高いが、全世代、今より高い傾向がある。

 マスコミがやたらと「若者の政治離れが進んでます」という論調を触れ回るせいで、あたかも昔の若者は政治に関心があったかのように歴史が書き換えられてしまっているが、実は若者のシラケ具合は今も昔もそれほど変わらない。厳密に言えば戦後、若者が政治に強い関心を抱いていた時代など存在していないのだ。