「新しい公共性をつくるためのネコの5原則」
隈研吾展が伝えたモノとは

 隈研吾がここまで絶大な評価を得るに至った理由を正確に把握するのは容易ではないものの、その一端には日本古来の文化や生活様式が積み上げてきた伝統を破壊せずに再定義していることが関わっているだろう。斬新さではなく親和性を、土地と反発しないデザインを世界に発信する仕事人として、数十年のキャリアを堅実に積み上げてきたことがそれを証明している。

 では、冒頭で紹介した隈研吾展では「新しい公共性をつくるためのネコの5原則」というテーマが掲げられていた。ご覧になった方も、そうでない方もこのテーマは難解に感じるのではないだろうか。

 本展では世界各地の隈研吾ワークスの中から、特に公共性の高い68点の建築をピックアップ。それらを「孔」「粒子」「斜め」「やわらかい」「時間」という“5原則”にカテゴライズし、一般的な展示で多い時系列順での表現とは異なる視点から作品を捉え直していた。

 さらに「ネコの視点から都市での生活を見直すリサーチプロジェクト」という、隈氏の新たな試みの発表や、VRなどの先端技術を活用した映像展示、国立競技場の模型や照明なども披露されていた。日本に軸足を置きつつも、世界各地に根を張る隈研吾氏が持つデザインへの審美眼から引き続き目が離せない。