もう一つ重要なことは、リーマンショックという世界的バブル崩壊後は多くの国で高成長していないということです。バブル以前とバブル以後、元に戻らない崩壊があるということを日本の事例が教えてくれているわけです。

 今回のコロナの拡大にも同じことがいえます。多くの人が、コロナの感染が収まれば、やがて元の社会に戻るだろうと思っていますが、果たしてそうでしょうか。コロナが根絶されることはなく、これからも共存していく時代が続くかもしれません。

 そうなると、いままでとはまったく違ったポストコロナ社会を生きていかなければならない。これほど環境に負荷を与えるものとどのように付き合いながら生きていくか、きわめて注意を要する経済体制をとらなければいけなくなるかもしれないんです。

「ポスト」という言葉には、前と後ではまったく内容が異なるという意味合いも含まれています。そう考えると、現在の日本も、これまでとはまったく異なる「ポスト資本主義」に進んでいるのかもしれません。そうすると、現在の経済的停滞は、ひじょうに深い意味をはらんでいる可能性があります。

池上:日本は資本主義の最先端をいっているというお話がありましたけど、海外では「ジャパニゼーション」という言葉が使われているんです。「日本化」という意味ですが、どういうシーンで使われているかというと、アメリカにしてもヨーロッパにしても、デフレが続いてゼロ金利政策を延々と実行しているにもかかわらず、いっこうにインフレにならない。あれ、これはかつて日本が体験してきたことと同じじゃないか。ゼロ金利をダラダラと続けやがってとバカにしていたけど、結局日本と同じ道をたどっているんじゃないかというわけです。

 米FRB(連邦準備制度理事会)のベン・バーナンキ前議長は、議長になる前、日本の金融政策を厳しく批判していました。「ゼロ金利政策を続けているにもかかわらず、延々とデフレを続けて何をやっているんだ」といっていたんです。ところが、アメリカの金融政策のトップであるFRB議長に就任してゼロ金利政策をとらなければいけなくなったとき、彼は「日本に謝りたい」といったのです。日本を批判してきたが、アメリカも同じ政策をとるしかなかったのです。