アフターコロナを見据えて
大きく方針転換

 JR東海といえばお堅い会社というイメージがある中で、コロナ禍以降こうした取り組みを矢継ぎ早に繰り出しているのは意外に映るかもしれない。そこには、アフターコロナに生き抜くための大きな方針転換があったという。

 コロナ以前の東海道新幹線は、ビジネス客であふれていた。JR東海が2019年12月に実施したアンケートによれば、平日の「のぞみ」利用者の6~7割、休日でも3割程度が出張・ビジネス目的で利用していたという。

 東海道新幹線はビジネス需要に応えるため、車両を16両編成1323席に統一してオペレーションを効率化。また最大毎時12本の「のぞみ」を運行するために新型車両の投入、既存車両の改造を進めたことが示すように、均質な顧客を大量輸送することに特化してきた。

 ところがコロナ禍でビジネス需要は急減。リモートワークの普及を踏まえれば、コロナが収まった後にビジネス需要が元に戻る保証はない。JR東海は鉄道事業者で唯一、時間はかかっても需要は元に戻るというスタンスを取っているが、強気の姿勢とは裏腹にコロナ後のあるべき姿も同時に模索している。その表れが冒頭に紹介した「EX 旅のコンテンツポータル」であり「ずらし旅」だ。

 ビジネス客という均質なターゲットを大量輸送するだけでは、来るべき少子高齢化社会に対応することは困難だ。仮にJR東海が言うように需要が元に戻ったとしても、リニア中央新幹線が開通すればビジネス客はリニアに流れる。そうなれば、東海道新幹線はビジネス以外の需要に目を向ける必要がある。利用者の多様化に応えるためにサービスの多様化を図り、多様なユーザーを複合的に輸送する交通機関へと変化していかなければならない。

 そういう意味では2020年5月から設定された「特大荷物スペース付き座席」や、2020年7月にデビューした「N700S型車両」における車いすスペースの増設(従来の2席から6席に増加)、今年10月から土日の上下2本の「こだま」に設定した「お子さま連れ専用車両」も、多様なユーザーに目を向け始めたことの表れと言えるかもしれない。