徐々に各社がジェンダーレスの商品の展開を進めている現状について、ファッションジャーナリストの宮田理江氏は次のように話す。

「店頭や新商品発表の流れを見ていると、近年ジェンダーレスの服装の裾野が広がってきているという肌感はあります。ただ、日本ではまだ一部のファッション好きが取り入れているくらいの段階なので、本格的な広がりはこれからとなりそうです」(宮田氏、以下同)

グッチが火付け役となった
ジェンダーレスファッション

 そもそも、ジェンダーレスのファッションの広がりは、2015年にGUCCI(グッチ)のクリエイティブディレクターに就任したアレッサンドロ・ミケーレが、世界のファッション界のトレンドに変化を与えたことがきっかけだという。

「ミケーレ氏は、『男性/女性だからこうあるべきだ』という固定観念にとらわれることなく、いいと思うものは男女どちらのデザインにも取り入れる、自由なアプローチを見せ始めました。ここからジェンダーレスのファッションが世界的に注目されるようになり、日本にもここ1年ほどで流れてくるようになりました」

 続けて、宮田氏は、世界的なトレンドとなったジェンダーレスファッションが、日本でも受け入れられ始めている理由を分析する。

「30代以上は仕事の時間が長く、私服を着る機会が減るという要因もあり、ジェンダーレスファッションは10~20代の女性からの支持が大きいです。女性が働くことが当たり前となり、自立した女性像にふさわしい装いを求める人が増えたことが背景にあると考えます。『か弱く見られたくない』『凜(りん)としたムードをまといたい』といったニーズも、ジェンダーレス商品を押し上げているようです。男性も『強くてかっこいい』というイメージだけでなく、『エレガント』『やさしい』などのイメージもありだと思う人が増えてきたのではないでしょうか」

 また、1990年代中盤以降に生まれた「Z世代」の人にとっては、芸能人のジェンダーレスな装いに共感する人もいるはず。多様性の時代においては、自分が心地よいと思った服を着たいという流れになっているのだ。

男女に人気の具体的な
ジェンダーレスの装いとは

 では、実際にジェンダーレスファッションにはどのような特徴があるのだろうか。

「女性服の場合、今まではレースやシフォンなどのやわらかい素材が中心でしたが、メンズ服にあるようなライダースジャケットやトレンチコート、スニーカー、コンバットブーツなど強めアイテムをミックスしたり、オーバーサイズの服を選んだりするおしゃれが人気となっています。女性が男性ものを着ているかのように見える『メンズライク』なスタイリングは、10年以上前から提案されていますが、特にそのなかで起こったワイドパンツのブームはジェンダーレスの呼び水になったところがあります」

 一方、男性が女性服をまとう例はまだ極めて少ないものの、徐々に男性の装いにも変化が起こりつつあるという。