これは税率にもよるが、固定資産税が高ければ、土地を生かせない者は脱落して、土地を手放さざるを得なくなるので、極端な高騰は避けることができる。固定資産税は不動産によって極端な貧富の差を起こしにくくするためのしくみにもなっており、貧富の固定化を防ぐ役割がある。

 反対に、固定資産税がなければ取得した土地を必ずしも効率的に運用する必要がない。余裕があれば、値段が上がるまで放っておいても構わない。つまり、勝ち組の固定化が起こるわけだ。固定資産税がなければ、最初に土地争奪戦で勝利した者がずっと勝利を謳歌(おうか)でき、負け組はずっと負けたままになる。中間層は不動産を持てずに、はい上がるチャンスがない。

 習近平指導部はこの状態を打開するために、不動産ローンの規制と、固定資産税導入の2段階で、現在の状態を打破しようとしている。その大きな目的は、多くの人民が不動産を所有できるようにすることと、国内の投資資金を不動産から金融資産に振り向けて、産業、特に製造業を中心とする技術産業の育成に役立てることの2つと考えられる。

固定資産税の導入が
権力闘争につながる可能性

 ただし、そこには大きな問題がある。中国の不動産価格は、北京や上海や深センなど代表的な都市はまだ維持しているが、それ以外の都市ではすでに下落が始まっている。多くの不動産企業で借金返済のための不動産の処分が始まれば、不動産価格はさらに下落し、「持てる者」の資産の縮小が始まる。この状態で不動産新税が導入されれば、不動産価格の下落はさらに加速して資産縮小に拍車がかかるかもしれない。

 ところで、ここで言う「持てる者」とは誰か。主には中国共産党幹部とその関係者だろう。習近平主席の周りにいるすべての者が「持てる者」である。したがって、習近平指導部が導入をもくろむ不動産新税に心から賛成している者はほとんどいないだろう。