ただ、習近平派と、現在の状態を打破したいという習主席の考えに賛同できる者だけがそれに賛成しているだけで、それ以外はみんな反対するのが当然だろう。言うまでもなく、固定資産税が本格導入されれば、そこにいるみんなが大損するのがほぼ確実だからである。

 習近平指導部が進める「バブルつぶし」は、単に不動産高騰を抑えるためのものではない。不動産所有の恩恵を中間層にも与えて、現在多くの者がかかる不満を解消して、中国共産党の「持続性」を高める政策である。長期的にはこの政策は中国社会に安定をもたらし、習近平指導部の影響力を高めるだろう。

 だが、短中期的に見れば、多くの中国共産党党員の不満を高めて、習近平主席自身の足場をもろくする。固定資産税導入をきっかけに習近平指導部と反対派の対立が激しくなる可能性もあり、今回の政策が成就するかどうかは不透明だ。

 また、「バブルつぶし」によって、日本が経験したような「失われた20年」が中国で発生する可能性も取り沙汰されている。

 日本の場合、1990年代前半のバブル崩壊とともに、日本経済が立ち直りを見せた1995年の消費税増税が日本経済の足腰を立たなくさせた原因になったと考えられる。

 中国における固定資産税の導入は、消費税と同様に増税効果があるため、不動産価格の暴落とともに中国経済を悪化させて、「中国版失われた20年」が起きる可能性がないとはいえないだろう。

 習近平指導部のバブルつぶしがかなり危険な賭けであるのは間違いない。だが、それでもバブルつぶしをやらなければならないほど、中国が追い込まれているというのも事実だ。まさに「行くも地獄、止まるも地獄」といえるだろう。