女の敵は女?
地域におけるアンコンシャス・バイアス

 よく、男性が定年後に地域活動に参加すると“嫌われる”ケースが多いという。会社で高い役職に就いていた人ほど周囲に指示を出したがり、会社組織のやり方を押しつけて煙たがられる。

 仕事で効率優先が身についてきた働く女性たちも同じだ。北山さん自身も、子どもが小学生のときのPTA活動で嫌な思いをしたことがある。

 年度末の忙しい時期にわざわざ半日休暇を取って参加したPTA活動だったが、打ち合わせの席でイラついた。周りの主婦たちが世間話に花を咲かせ、いっこうに先に進まない。そもそも今日の議題は何で、何を決めなくてはならないのか、はっきりしない。そうした状況に業を煮やして、ついついその場を仕切ってしまい、周りに嫌な顔をされてしまった。

 かつての“失敗”を思い返し、今回は「なるべく出しゃばらないようにしよう」と思っていた。だが、なんとなく感じる「アウェー感」。自分は新参者だから仕方がないとは思うものの、どこか疎んじられている気がする…。

 地域活動の中心である専業主婦の女性たちは、「○○さんは、会社人間だったから仕方ないね」と男性シニアには寛容だ。だが、「自分に対しては、なんとなく冷ややかなものを感じた」と北山さん。子育てや地域活動よりも「仕事を優先してきた女性」とでも言いたげな、「批判めいた雰囲気」を感じたと言う。

 いささか被害者意識が強い気もするが、北山さんの気持ちもわからなくもない。同じ会社人間でも男性は仕方ない、と許されるが、同じ女性同士、同性には厳しいものがあるかもしれない。

「地域活動は暇を持て余した専業主婦たちが中心で、あまりにも非効率」と、働く女性はよく口にする。だが実際は、ほとんどの主婦がパートなど何らかの形で働いている。

 それでも長年フルタイムで働いてきた女性たちは、地域活動の担い手である女性たちとの間に壁を感じるときがある。アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)が、働く女性と専業主婦の双方にあると筆者は考える。