親と夫と自分
人生3度の介護問題

「一時は介護離職も考えたけど、君のおかげでなんとかなったよ。長い間いろいろありがとう。これでやっと介護から解放されると思うと、正直ほっとするよ」。義理の母の49日法要が終わり、夫からねぎらいの言葉をかけられた大村有紀子さん(59歳、仮名)は、思わず夫の顔を見返した。

 50代になると、親の介護に直面する人も多い。介護と仕事の両立は大きな問題で、「就業構造基本調査」(総務省、2017年)によると、「介護・看護のため」に離職した人は、9万9000人にも上る。

 共働きの場合、自分の親の介護を働く妻にだけ押しつける男性は、さすがに少ないだろう。とはいえ、介護問題でも男性と女性は事情が違う。男性が介護で意識するのは、自分の両親と妻の両親について。だが、女性の場合はそれだけじゃない。

 自分の両親を早くに亡くし、義理の父、母と見送った大村さんは、7つ年上の夫の顔を見つめながら、「次はあなたの介護だわ」と心の中でつぶやいたと言う。

 女性は「人生3度の介護問題」に直面するといわれている。一般的に男性のほうが妻である女性よりも年上のケースが多く、いざ要介護となったら妻をあてにしている男性は多い。つまり、女性は親の介護が終わったら、夫の介護が待っている。

 では、もう一つの介護とは…。

 それは、女性自身の介護問題。子どもには迷惑をかけたくないと思うなら、女性は元気なうちに考えておかなくてはならない。

 独身ならばなおのこと、早めかつ具体的に考える必要がある。若い頃は友人たちが、「後のことは任せて!お互い支え合おう」と言ってくれていたとしても、自分が高齢になれば、友人たちも高齢である。