脳機能を「乳酸」がみるみる上げる?ただの疲労物質ではなかった意外な事実ひとたび運動を始めると、脳は意外なエネルギーを糧として作動する(写真はイメージです) Photo:PIXTA

運動は脳の機能を押し上げて、感情コントロールさえしてくれるという。運動によって「脳力」がアップする、知られざるメカニズムとはどんなものか。実は疲労物質というイメージが強い乳酸が、脳の活性化に大きな影響を与えていることがわかってきた。(マガジンハウス『ターザン』2021年6月10日号特集「運動は、なぜ脳に効くのか?」より転載)

運動中の脳のエネルギーは
糖質ではなく乳酸だった!

 以前の記事で述べた通り、全身の組織の中でも随一の大食漢、脳のエネルギー源は糖質だ。ただしこれ、あくまで「平常時」という条件つき。ひとたび運動を始めると、脳は別のエネルギーを糧として作動する。何を隠そう、その名は「乳酸」だ。

 改めて説明しよう。運動によって糖質が分解されるとピルビン酸という物質になり、一部は細胞内のエネルギー産生工場、ミトコンドリアに取り込まれて多くのエネルギーを作り出す。そして大部分は乳酸へと変化する。

 運動を続けてカラダに乳酸が溜まっていくと細胞の活性が低下し、疲れを感じるようになる。よって乳酸=疲労物質。これが長年信じられてきた定説。でも後年、乳酸がエネルギーとして再利用されることが分かり、ひとまず濡れ衣は晴れた。

 事実、立命館大学の橋本健志教授は、運動を開始すると乳酸を運ぶ分子の働きが活発になり、ミトコンドリア内に直接取り込まれることを突き止めた。だが、そればかりでなく、脳のエネルギーとして活用されていることが近年分かったのだ。